クレジットカード 詐欺の手口1


資金ゼロでサラ金開業、

"コーチ屋"稼業で50億円を搾取した男

 

 

3年間で30を越えるチェーン店を展開

平成元年9月、全国指名手配の男T(当時38歳)が逮捕されよった。

昭和61年に貸金業の届け出して事務所開いて、3年間で30を越えるチェーン店

100人以上の従業員を抱えるまでに至った人物や。

 

このTが築いたグループは、急発展を遂げたサラ金チェーンやなかった。

実像はクレジットカードを悪用して50億円も荒稼ぎした詐欺団

各店舗を舞台に"コーチ屋"て言われとる裏稼業に励んどったんや。

 

 

Tがこの大事業に挑んだ当時は、裸一貫やったらしい。

それどころか郷里で始めた会社が倒産して、

借金取りから逃れて上京したていう経緯があったんや。

けど、せっぱつまって犯罪に走ったんやないで。

貸金業者に勤めて業界を勉強して、

それから貸金業の届け出して事務所を開くていう手順を踏んどる。

 

 

「金を作る方法」と称しカード詐欺を客に伝授

「案外、まじめに身を立て直そうとしてたんちゃうか」て思うかも知れんけど、

この時点で資金はゼロや。

貸金業ができるわけあらへん。

 

Tは借金苦にあえぐ人々に金をつくらせて

"コーチ料"をせしめてたんや。

 

クレジットカードを悪用した詐欺やな。

 

コーチ屋の客は、スポーツ紙とかに掲載された広告見て来る。

大手サラ金ではもう借りられへんほどの

多重債務を抱えた人がほとんどや。

 

コーチ屋はクレジットカードを持っている客が来たら、

「金を作る方法を教えてやる」て言うてすぐさま

買い物ツアーに連れ出す。

 

ほんで、デパートやら電気店を回って家電とかを次々と買いあさって、

バッタ屋に直行して売り払うんや。

その半分以上がコーチ料になるていう仕組みや。

 

 

客の手元に残るのは買い取り価格の2割程度

Tのグループの場合、客の取り分はわずか2割程度で、店長が2割、

残りはTのところへ回収されとった。

 

ある男性は5店舗で合計100万円相当の品々を買うて、

バッタ屋で60万円を受け取ったんやが、

手元に残ったのは10万円ちょっとだけや。

 

客は支払える見込みのあらへん買い物をして、

コーチ屋を儲けさせとったんや。

 

Tは客の中からコーチ屋向きの人材をリクルートして、

成績が良かったら店を持たせて事業を拡げていった

ていうから、かなりのアイデアマンや。

 

 

被害を受けるんは、クレジット会社や。

借金漬けのカード所有者は

請求書が送られても、支払われへん。

せやから、「取り立て不能」として決算期に損金として算入されて、

犯罪として追及されんと終わるんが普通て言われとる。

 

なんでかって言うたら、クレジット会社はあらゆるリスクを考慮して、

詐欺事件の損害さえも計算に入れて経営しとるからや。

つまり、会員の年会費やら分割払いの金利、小売店から取る手数料とかで

損害がまかなわれとるってことや。

 

 

当時なら通用した限度額を超える買物

けど、クレジット会社もそう黙ってはおれん。

この詐欺団が捕まったきっかけは、都内のTグループの店舗の客やった。

神奈川県在住の彼女は

支払う意思なく買物してクレジット会社に損害を与えた

て疑われて、県警は彼女を詐欺罪で、店の従業員を詐欺の共同正犯で摘発しとる。

 

それでグループの存在が発覚してチェーン店が次々摘発されて、

Tもお縄を頂戴したってわけや。

 

 

詐欺総額が50億円まで膨らんだワケは、

当時は限度額を超えた買物ができたからや。

 

高額商品を避けて数多くの商品を買いまわったワケは、

10万円超えたら店がクレジット会社に照会するからや。

そやから、

それ以下の金額で換金率のエエ商品

買いあさるのがポイントやった。

 

 

今はほとんどの店にキャットシステムが導入されたから、

この手口のうまみは無くなってるけどな。

 

それにしても、まじめにやっとるカード会員が、

知らんうちにこんな詐欺の穴埋めまでさせられとったんかて思たら、

穏やかではおれん話やな。

 

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