押印した書類をファックスで
■■■■■■送ってきたときの効力
◆ 意思を伝える手段は、電話ファックスなどいろいろある
注文とか、売買を承諾するなど、なんらかの意思を伝える方法として
手紙、電話、ファックスなどがあります。
このような意思表示は本人の真意が出ている限り有効なものです。
この意思を伝える手段として、
昔は手紙、文書などが使われました。
たとえば、注文を出すときは注文書を発送するということをしていたが、
通信手段の発達により、それが電話になり、
さらにはファックスになってきました。
ところで、かつては注文書に注文主の
記名押印がされていました。
しかし、電話のように伝達手段が文書でなく音声になると、
話してもその内容が残るわけでなく、その場から消えていきます。
電話は音声で紙に残るものでないから
記名押印ということはできません。
このような場合はどうしたらよいのでしょう。
◆ 記名押印をする意味は後日の証拠として残すこと
記名押印というのは、
文書に書かれた内容が真実であることを
承認したしるしとしての意味をもっています。
たとえば、契約書に記名押印する場合、
当事者が、書かれた契約内容による約束を
承認し成立させたということを意味します。
文書に記名押印をするのは効力の問題でなく、
後日の証拠として残すという意味です。
しかし、
約束事はかならずしも文書に書くとは決まっていません。
現に契約書なしに取引されている例はいくらでもあります。
もともと約束事ですから、電話などによる場合、
記名押印がないのはあたりまえで、
お互いの意思の合致があれば約束事は成立します。
◆ ファックスの記名押印は有効か
以上のことからわかるとおり、
本来、意思表示は本人の真意が相手方に届くことによって
効力を発揮するので、
かならずしも書面によらなくてもいいわけで、
記名押印がある文書でなければならないというものではありません。
問題は、
本人がそのような意思表示をした覚えがないという争いが
生じたときに、本人が意思表示をしたのだという
証明手段があるかということです。
たとえば、
ファックスで送信した場合、文書の内容だけですと、
誰が文書の内容の意思を表示しているかわかりません。
少なくとも
誰がそのような意思を表示しているのかという
表意者の記載は必要です。
表意者の真実の意思である以上、
押印がなくても本人の意思を送信しているのであれば
有効です。
最近は
注文書もファックスで送信されることが多くなりました。
これには記名のみで押印がないものも使われています。
この場合、
注文書に本人の自筆や押印があれば、
注文していない、などと争いになったとき
証明の役に立つことになります。
したがって、記名押印した文書のファックスは、
原本が送付されなくても意思表示としては
有効なものと考えられます。
「ファックスの館」編完結・・・ 次号新展開!!