業界人をかたってダマす! 其の三



ナンノがやって来る! に踊った田舎町の人々


中井貴一主演の大河ドラマ『武田信玄』で

盛り上がっていた昭和63年の話や。

山梨県大月市とゆう所で、

一人のサギ師(当時40歳)が騒動を巻き起こしよった。







そいつは4日間にもわたって、

「テレビ番組の撮影場所を探している」

「ナンノと中井貴一主演のテレビドラマの撮影がある」と、

散々周囲に吹きまくって、地元をあおれるだけあおって、

宿泊費や飲食代を踏み倒してトンズラをかましよった。







テレビ局のディレクターを名乗っていよったこのサギ師やけど、

その1ヵ月半前に都内の知人宅から30万円相当の指輪を盗み、

ポリさんに追われていよったケチなコソ泥やった。







笑える話やけどそいつは、サングラスをかけてベージュの上着を着て、

胸に【報道】マジックインキでなぐり書きした名札をつけて

田舎の人間を騙していよった。







そいつは「ロケ地をさがしている」タクシーを使い

市内をあちこち観光しよった。

とある地元の観光名所では、わざわざ車から降りて

「モデルをここに立たせて、ここから撮ろう」などとほざきながら、

それらしく指を丸めて、カメラをのぞくような仕種をしとった。

ほんまアホ丸出しやで








昼食に入った小料理屋のおかみが【報道】の名札を不信がって

たずねたところ、

「取材であちこと歩くものだから、

警察に不信に思われないようにつけているんです」

と答えよったらしい。







普通に考えたら、

めちゃくちゃあやしいで、ほんまに






けどこんなんで騙されてるやつがおるんは、

そいつは自身満々にゆうてたんやろな。

あまりにも堂々と言われたら、

相手は逆に、疑ってもうて悪いなぁとまで思ってまうもんや。







とにかくこのニセ・ディレクター、手持ちの現金がのうなるまで、

滞在していた4日の間に、行く先々で

「南野陽子がロケにやってくる」

と話して、人々を信じ込ませよった。

最終的に、騙した金額は、

タクシーの乗車代3万円旅館の宿泊費2万7000円

小料理屋での無銭飲食1万円と金額的には微々たるもんや。







と、まあここまではどこにでもありそうなサギ話や。

けど、この話は、
騙した張本人も思いもよらん大きな話になってしもた。










実は、このサギ師は、クソ丁寧に南野陽子が来るロケ地として、

ソバ屋や川口湖畔のボート屋などの予約を取りまくっとった。とった。






そのせいで、そのウソのロケ当日、

地元の人間カメラ色紙を持って

朝早くから集まってきよった。






さらになんやけど、話をききつけた熱烈なナンノ・ファン

ようさんやって来て、地元はどえらい騒ぎとなりよった。








それだけやない。

南野陽子がロケ当日にヘアメイクするからと頼まれた美容院にいたっては、


アホな事に、メイク室に使わせろといわれた部屋のジュータンを新調し、

バラの花束まで用意しよった。

ほんまとんだ出費やで。







この男、逃亡中やのにディレクター気取りで気持ちよぉなりよって、

お金を騙し取るのとは直接関係ないウソばっかりついて回っとったらしい。








おもろいサギ師もいるもんやで。






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