契約書が二枚以上になるときの
記名押印の取り扱い
◆ 契約が二枚以上になるときは契印か割り印を押す
契約書が一枚で書きつくされているときは、
その末尾に契約を承認したしるしとして
署名押印や記名押印でことたります。
しかし、契約書が二枚以上になると、
署名押印などがなされている末尾以外の
紙面の契約内容の部分を変更し、
綴じ直しても、初めからそのような契約書が
作成されたという外観が生じます。
このような契約書の「改ざん」は予防しておくことが必要です。
また、本当に当初の契約書のとおりであっても、
争いになったときに改ざんされていると
主張された場合は証明が困難で、
水掛け論になることもあります。
そこで、これらの予防方法として行われているのが契印、割り印の方法です。
◆ 契印、割り印とその仕方
「契印」というのは、
一般に二枚以上からなる書類の一体性を保証するために、
綴じた紙面の前の頁と後の頁の二枚の紙にまたがって印鑑を押し、
前の頁と後の頁が一体であることがわかるように押された印影をいいます。
「割り印」というのも契印と同じ意味ですが、
前の頁と後の頁にかけて押され、印影が前の頁に半分、
後の頁に半分あらわれるためにこのように表現されます。
契印と割り印は、
いずれも綴じられた契約書の一枚目をめくって開き、
前の頁と後の頁にまたがるように印を押します。
枚数が多いときは、さらにめくって契印を押して
最終の紙までこれを行ない、つながるようにします。
そうすれば、最後の頁の記名押印はつながった
全頁の内容について「承認したしるし」となります。
契印と割り印は、
承認しとして記名押印に
使ったものと同じ印で押さなければなりません。
そして、契約当事者すべてが、
このような契印、割り印をする必要があります。
というのは一方だけの契印だと、
やはり一方の当事者が改ざんすることができるからです。
◆ 契印、割り印を省く方法
ところで、契約書の枚数が多い場合、
いちいち頁ごとに契印や割り印をするのを
省く方法があります。
昔はよく行なわれた方法ですが、
契約書が剥がれないように一体とした袋綴じにして、
最後の綴じしろだけに当事者が割り印をするというものです。
この方法によっても改ざんは防げます。
要するに改ざんを防ぐ方法ですから、
かならずしもこの方法しかないというわけではありません。
たとえば、登記所で不動産や会社の登記簿謄本を
発行するとき、「一体のしるし」としてホチキスで綴じ、
全枚数にわたって「法」という字をかたどったパンチ穴をあけ、
最後の頁に記名押印がされています。
最近は裁判所でも「裁」の字をかたどったパンチ穴を使っています。
次号新展開へ!まだまだ続きます。