三文判に効力はあるのか
◆三文判は誰にでもすぐ手に入る
「三文判」というのは、
文房具店や印鑑店などで売っている出来合いの印鑑のことです。
三文というのは昔のお金の単位である「文」からきていて、
一文の三倍の三文という安い値段で手に入るという意味です。
私たち日本人は、
外国人のように「サイン」による習慣は定着していません。
日常生活で「ハンコ」を使うことが多く、
役所に出す書類や、物品購入の申し込みにも【印】
とあってハンコを押す欄があります。
ところで、
三文判はお金さえ払えば誰でもすぐ手に入ります。
高橋さんが「鈴木」のハンコを買っても別に文句を言われません。
また鈴木さんが、たまたま印鑑を持ってこなかったといって
三文判を買って書類作成に間に合わす場合もあります。
このような三文判を使った書類は、
本当にその人が作成した書類として認められるかという疑問がわきます。
◆三文判の価値と効力
三文判によって作られた書類は
現実にどのような扱いを受けるのでしょうか。
三文判だから効力がないということを言う人がいますが、
これはそんなところからきています。
では、三文判によって
作成された書類の価値や効力とは
どんなことか考えてみましょう。
法律では三文判に効力が
ないという定めはしていません。
法的に考える限り
「その人」が「その人の印」として
使用している限りでは有効なものといえます。
ですから、契約書に三文判を押して、
後日その契約がなかったことにしようとしても、
「その人」が「その人の印」として使用した以上、
「あれは三文判だから無効だ」などとは言えません。
◆その人が本当に作ったのかという事実認定の問題
実をいうと、
これは法律以前の問題で、
その書類が本当に「その人」によって
「作成された」かどうかという事実を認定するものです。
裁で問題になるときも、この事実の認定の問題です。
たとえば、
「鈴木」という三文判で作った書類があるとします。
このとき問題になるのは、たとえ三文判であっても、
本当に鈴木さんが書類に三文判を押したのかということです。
鈴木さんが押していれば、
鈴木さんが作成した書類として有効です。
これと違って、
高橋さんが「鈴木」の三文判を使って、
勝手に鈴木さんが作成したような書類を作った場合は無効です。
要は「その人」が「その人の印」として使用したかという点に
あるのです。
三文判の書類の価値を判断するにあたって、
三文判は誰でも容易に
手に入れることができるという意味で、
「自分が作成したのではない」と主張されると、
「その人」が作成したことを証明しなければならなくなり、
その意味で証拠価値が低いといえます。
そして・・・ 次号新展開へ!!