署名と記名押印はどう違うか
「署名」は、
契約書やその他の書類などに
「本人が自分の名前を記載すること」で、
一般にはサインともいいます。
署名は
自分で自分の名前を書くという「自署」が原則であって、
他人が本人の名前を書くことは署名とはいえません。
もっとも、他人が本人の記名を代筆することも
法律で例外的に認められることがあります。
署名は本人が作成したことを
証明する意味をもっています。
これに対して
「記名押印」というのは、
契約書やその他の書類などに
「本人の名前を記載し、それに本人の印鑑を押印すること」
です。
記名が署名と異なるところは、
本人の名前の記載をあらわす仕方が、
かならずしも本人の自筆(自署)に限られず、
他の手段であらわすものも含むということです。
本人の名前の部分は、印刷やゴム印、
ワープロやタイプまたは第三者の代筆でも
記名ということになります。
ここでは押印が重要な役目をもつことになります。
◆契約書には署名か記名押印か
契約は
契約の当事者の約束事です。
約束事を承認したという意味で契約書に
当事者本人が承認の「しるし」をあらわすわけですから、
本人の自署である署名は価値が高いことになります。
ところが、
わが国では昔から、その人のしるしとして
重要な書類に「花押」を押したり、
また誓約したしるしとして
連判状に判を押すなどの歴史がありました。
「承認したしるし」に名前を書く以外に
判を押すということが一般的となり、
正式な「承認のしるし」の仕方となっています。
ですから、契約書は記名押印が
原則ということになっています。
そこで、
商法のなかには「署名をする」という
条文がありますが、
記名押印が原則になっている社会に
合わせるため、
「商法中署名すべき場合に関する法律」によって、
商法中、署名する場合は、
記名押印で署名に代えることができることになっています。
◆署名のみの書類は有効か
記名押印が原則であるとしても、
署名は本人の自署ですから、
「本人が作成した書類」という意味では、
証拠の価値としては記名押印以上のものがあります。
ですから、署名のみのものも有効です。
しかし、現実には、
署名だけの場合は、本人が本当に署名したのかという、
署名の真実性が問題となります。
署名というのは、「署名する人」の状態によって、
いつも同じとは限りません。
また、第三者が書くということも考えられます。
署名も三文判と同じように
誰でも署名らしい結果を作り出すことができます。
そして、本人が自分の署名でないと主張したときには、
筆跡鑑定などの手段によってその証明を
していかなければならないという場合も出てきます。
署名は証拠価値の高いものですが、
事実性の判別がつきにくいということがいえます。
次回はなんと09号室!!