同銀行栃木支店の貸付係、Ｋ子（当時23歳）が

架空の預金証書を担保にし、

約2億1000万円を横領詐欺し逮捕された事件の話や。




彼女が横領を始めたのは昭和49年1月のことや。

前年、彼女は旅先の東北本線車中で

Ａ夫（当時25歳）という男性と知りおうた。




この男こそ、この事件の主犯や。

Ａ夫は初対面のＫ子にこう自己紹介しよった。




「私は国際秘密警察の者です」




なにゆうとんねん？　ほんで一体なんや、それ？

　"スパイ大作戦"か！？

さらに、このデタラメ話に信憑性をもたせるためにＡ夫は

「ＴＶで千葉真一がやっているアレです。アレが私の仕事なんです」

と説明しよった。




そーか、そん時テレビではやっとった、

"キーハンター"の事ゆうとったんか。


とか言うて変に感心してる場合やないで・・・ほんまに。




なんとこの貸付係のＫ子、すっかり信じ込みよった。

ほんま訳がわからんで、このねぇちゃんも・・・

もしそやったとしても"国際秘密警察官"は

東北本線の電車にはそう乗っとらへんで・・・。




その後、二人は何度かデートしとるうちに､

「キミと結婚したいが組織は危険なので抜け出したい。

そのためには資金が必要なんだ」

田舎者のK子はA夫の話を１００％信じよった。




まず合法的に借りた３５０万円を

"組織から抜け出すための逃走資金"としてその男にやりよった。

この金額は"キーハンター"に出演している千葉真一氏の

ギャラよりはるかに高いで。




この時点で話が終わりやったら、単なる結婚サギ話や。

だが、愛は盲目とはよう言うたもんや。

「もう少し金があれば組織から抜けられる。そうすれば金も返せる」

と適当な事ゆうて、例の滋賀銀行の事件の手口で横領するように

その女をそそのかしよった。

さすが、国際秘密警察官や。　犯罪には詳しいのぉ（笑）




K子の手口は定期預金担保の伝票、

つまり借入手形と貸出伝票を偽造しよって、

近くの席の役職者のハンコをこそっと使って、

偽名で開いた普通預金口座に

金を振り込ませる方法や。




銀行側のチェックの際も、K子は偽の手形だけを抜いて隠よった。

1年半で63回行った横領の総額はなんと2億1190万円や。

このねぇちゃんは横領テクニックに関してはアホやない。。




けどほんまにヤリ手なんは男のほうや。

K子はただの"資金窓口"としか考えてへんかったんや、

ほんまは別に愛人が3人いよった。

そのうちの1人とは結婚・離婚しとったんや。



こいつの本業（？）は、"国際ユニオン情報部センター"という

名前の競馬予想屋をやっとった。

こいつほんまに国際と名のつくもんすきやのぉ（笑）

"窓口"で得た資金は

このうさんくさい会社の経営や愛人などに使いまくりよった。



事件バレた直後、愛人女性と逃亡しよったが、

61日後にパクられてしまいよった。

そん時のA夫の所持金は、250円やった。

華麗なるオンライン横領の結果
三和銀行詐欺横領事件（昭和56年）

同銀行の大阪・I子（32歳）が

オンライン端末機を操作しよって

1億3000万を横領しよって、海外逃亡した事件の話や。




おどろいたらあかんで。

この事件はたった1日でおこった前代未聞のスピード犯罪や。

さっきの"国際秘密警察"よりもはるかにスリルな話や。




昭和56年3月25日午前10時30分。

1億8000万円の架空振込みをオンライン端末で操作。

架空名義で吹田、豊中、東京の新橋と

虎ノ門の4支店へと分散して送金しよった。




そして作業が終わるとすぐに「歯医者に行く」といって外出しよった。

ここからが時間との戦いや。

銀行側が不正に気づき

出金ストップをかける前に各支店へ行って引き出さなあかん。




茨木支店は午後1時の中間精査で

異常に気付いて、

すぐに歯医者へ探しに行ったんやけど、I子の姿はなかった。

慌てて端末機を調べたら架空入金されとる・・・。

これはヤバい事になっとるとみな焦りよった。




けどこの騒ぎはあとの祭りになってもた。

同支店から出金ストップをかけれたんは午後3時15分や。

I子は吹田、豊中とまわり、飛行機で東京へ・・・

タッチの差で引き出しは成功しよった。




せやけど、その女が引き出せた現金は5000万円や。

残金は保証小切手や。

その女はすぐにその足で羽田空港へ行って

台湾経由でマンマと海外へ高飛びしよった。




緻密な計画性を物語っとるんが実行日や。

この女は銀行が1年間で一番忙しい決算月の25日を選んで

金を抜きにかかりよった。




当日の茨木支店は多忙を極め、

毎日行われる中間精査の時間もいつもより2時間遅かったんや。

このタイムラグがなかったら、

金の引き出しは不可能やったんや・・・




当然の話やけど、裏でI子を操った男がおる。

M之35歳）。コイツは羽田空港でI子を出迎えて車に乗せ、

残りの2支店を駆け回った。だが、海外脱出はしてへん。




I子から現金4500万円を受け取ると

「俺もあとから行くから予定どおり待っといてくれ。

マニラで花屋でもやろな」と愛の言葉を囁き、

残り500万円だけを持たせたI子を見送った。




2人は昭和54年夏に知り合うた。

M之は霊園管理会社の取締役や。

派手好きで暴力団との関わりが深い男や。




マニラで作った旅行会社の経営が

上手くいかんと約5000万円の借金を作っとった。

さらに妻子持ちや。

コイツは誰が見ても悪党やで・・・




せやけどI子はこの男に惚れてしまいよった。




マニラのボロアパートに潜伏し

M之が来るのをひたすら待っとった

I子の心境はどんなもんやったんやろなぁ。

寂しいもんやで、ほんまに。




まぁ当然やけど、その男は現れへんかったんや・・・。




2人が逮捕されたのは事件5ヶ月後や。










これらの3つの事件の共通点は、

３人の女性すべてが典型的なマジメ行員やっちゅうこっちゃ。

年齢の違いはあっても、上司からの信頼たるや絶大で、

そのことが横領詐欺の発覚を遅らせた共通点もある。

男にだまされてとる女たちもアホやけど、

優秀な行員やちゅうて管理を甘くしとる銀行側も相当おまぬけやで。



ちなみに横領詐欺は、

そそのかした方よりも実行者の方が絶対に重い刑を喰らうらしいんや。