第三者が記名押印をしたときの効力
「記名押印」や「署名押印」は、
契約などの内容を承認したという
「承認のしるし」として行なわれるものです。
その仕方は、
名前を書き(記名)、印鑑を押す(押印)ことです。
つまり、印鑑を押すだけでなく、
記名または署名がともないます。
印だけですと、
印は姓を刻印した印鑑が普通ですが、
たとえば「近藤」という印が押してあっても、
どこの近藤かわかりません。
そこで、近藤一朗と書いて近藤の印を押すわけです。
これで同姓同名の場合のほかは、
誰が、その契約を認めたのかはっきりします。
◆記名押印は本人でなければだめか
ところで記名押印の記名は、
自書に限られていないから、
第三者が本人名を書いても
記名押印の形式はととのいます。
そうすると、本人でない者でも、
「本人が記名押印した状況」を
作り出すことができることになります。
それでは、第三者が
「本人の記名押印」した場合、効力はあるのでしょうか。
記名押印は、本人が承認したしるしですから、
原則としては本人が行なうべきものです。
しかし、前述したように、本人でなくても本人の
記名押印を作り出すことができるから、
本人が第三者に指示して行なっても、
本人がしたと同じように考えてよいはずです。
したがって、
本人が指示して第三者に本人名を書かせ、
これに本人の印を押させた場合でも
本人の行為として有効です。
この場合、第三者は「本人の手足」として
「本人の記名押印を代行」したということになります。
しかし、
後日争いになったときに、
記名は自分の字でない、
印も押したことがないと主張されたときには、
本「承認した」という証明は困難になります。
少なくとも、本人が同席し、
本人の指示で第三者が代行したということを
見届ける必要はあります。
また、「自書」のほうが証明しやすくなります。
◆本人と関係ない者が記名押印した場合
記名押印は
本人が直接行なわなくてもいいといっても、
第三者が「本人の指示なしに
本人の記名押印を行なった」場合は、
本人の記名押印ということはできません。
これは「本人の承認のしるし」ではなく、
第三者が「本人の記名押印の外形」を
作り出しただけだということができるからです。
このように、
本人の指示がないのに
「本人名義の記名押印」を行なうことは
「署名の偽造」であり、承認した文書の偽造として
刑法で罰せられることになっています。
また民事上では、
本人にはなんらの効力も及ぼさない無効なものとなります。
そして・・・明日10号室へ・・・