「仮契約」という言葉は法律的な言葉としては使われていません。
しかし、現実には、
正式の契約を結ぶまでの「仮の契約」という意味合いで使われています。
仮契約という言葉はあまり熟していないので、
その内容もいろいろあるということができます。
◆仮契約のほとんどは「仮の」ものではない
仮契約は「本契約」「正式な契約」をするまでの「仮の」ものという観念です。
しかし、仮のものと常識的に考えているものは、
本当は仮の契約でなく、正式の契約の場合がほとんどといってよいでしょう。
このことは仮契約といっている契約の内容を見るとはっきりします。
現在に仮契約といっているものの多くは仮のものでなく、
具体的には他の呼び名がついている正式な契約ということがわかります。
たとえば、これから新築するというビルのテナント募集のときに、
ビルを所有することになる人が、
これを借りようとする希望者と
「ビルが竣工したらお貸ししましょう」「借りましょう」という契約をすることがあります。
このような場合、
まだ賃貸借が始まらないから「賃貸借の仮契約」と考えている人が多いようです。
しかし、これは契約自体は「賃貸借の予約契約」であったり
「賃貸借契約(竣工したときから賃貸借が始まる)」です。
理屈からいえば仮のものでなく、正式の「賃貸借予約契約」「賃貸借契約」です。
◆本当に「仮の」契約であれば結ぶ意味がない
「契約は守らなければならない」というのが社会のルールです。
そして、これを破った場合は契約違反としての責任を問われます。
仮契約という意味が、
仮のものだから破ってもなんら責任を問われないような契約で、
契約の当事者を拘束しないものであるというのであれば、
「契約をしても、しなくても同じ」ということになり、
契約を結ぶ意味、存在価値がなくなってしまいます。
逆に仮契約が契約の当事者を拘束するものであれば、
これは正式の契約ということができます。
たとえば、「売りましょう」「買いましょう」という合意ができ、
買い主がその目的物を「手に入れたとき」
に効力が発生する売買契約(停止条件付売買契約)でも、
「手に入れることができなかったときは契約を解除する」
とう売買契約(解除条件付売買契約)でも正式の契約です。
また、売買などの細かい条件が後日の当事者の協議にまかされるという場合でも、
売買契約として正式な契約です。
◆もうひとつの仮の意味
会社の支店等が契約する場合に、
本社の決済は受けられる見込みがあるが、
万が一、決済がされないときは契約をなかったものとする、
というような趣旨で契約に調印することもあります。
この場合も仮契約という表現をとるが、
前述したように条件付の契約といえます。
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