取引に関係する書類のなかには
「○○契約書」というように「契約書」という表題がついたもの、
ただ「覚書」とか「念書」というように表題から内容がわからないものがあります。
一般に、覚書というのは当事者の約束事であり、
その点で契約書に似たスタイルをとっており、
場合によっては簡易な契約書の役割を果たす場合があるのに対して、
念書は一方が他方に対して一筆差し入れるという誓約書的な意味をもっています。
◆契約書とは、約束事の内容を書面にしたもの
契約書の場合には、二人以上の当事者がいるという特色があります。
また、一定の法律効果を発生させる意思表示を内容としている点にも特色があります。
たとえば、「建物売買契約書」ですと、
相対する当事者である売り主、買い主があり、
建物所有権を移転させるという一定の法律効果を発生させる意思表示、
合意を内容とすることになります。
このような約束事の内容を書面にしたものが契約書です。
契約書の内容の特色は一定の法律効果を発生させることですから、
法律効果と関係がないような事項について合意された書類は契約書とはいいません。
これに対して覚書、念書は、かならずしも法律効果を発生させるためのものではありません。
契約書を作るほどではないが、
お互いの約束事を確認するために
作成しておく略式の文書一般を覚書といっています。
覚書には契約と同じように二人以上の当事者が
調印することになります。
内容は契約と同じように法律効果を発生させようという合意の場合もあれば、
契約書には記載されなかった事項について、
追加したり、具体的に詳細な事項についての約束事を内容とする場合もあります。
契約の実質をもつ場合は略式の契約といえましょう。
現実に覚書という場合は、契約に付随した約束事に多く使われています。
たとえば、覚書として、
「甲と乙とは平成○年○月○日付○○契約書第○条の履行の方法について次のとおり合意した」として、
履行の具体的手続きを決めることがあります。
◆念書とは、一方が相手方に差し入れる書類
念書というのは、字のとおり「念のために書く」もので、
一方が相手方に差し入れる書類です。
念書の内容の多くは、念書を書く者が、
一方的に義務を負担する内容や、
一定の事実を認める内容のものとなってきます。
したがって念書のもつ意味は、
後日の証拠として利用されるためにあるといってよいでしょう。
たとえば、「土地を買うことを約束します」という念書の場合、
相手方には土地を売る義務がないという意味で「売買契約書」とは異なりますが、
相手方からは、これを証拠に「土地を買え」という請求をし、
念書を証拠として利用することになります。
次回は法律の館2階10号室へ!!!