契約は商取引だけとは限りません。
日常の私生活においても契約を結ぶ場合があります。
契約は約束を契ることですから、
専門家でなくとも約束した内容がわかることが望ましいのです。
難しく書くより平易な文章で、
必要最小限のことを落とさないように
書くということを心がけることです。
そういう意味からいえば、
契約書に難しい特別の用語を
使わなければならないということはありません。
◆表現の省略化で読みやすくする
契約書は相対立する二人以上の当事者が約束するのですから、
お互いの権利義務を明確に書くことになります。
ところが、契約書のなかに「甲野太郎はどういう権利を取得する」とか
「乙野次郎はどういう義務を負う」などというように書き始めると、
文章のなかに「甲野太郎」や「乙野次郎」が何回も出てくることになり、
文章が長くなるばかりか、
かえって読みづらいことになります。
そこで、「甲野太郎を甲、乙野次郎を乙として次のとおり契約を締結した」というように、
契約書の前文で契約の当事者を符号化して契約書のなかに
「甲」「乙」というようにして内容を書いていくのが一般的です。
また、目的物件が不動産である場合は、
不動産を特定する要件を書かなければなりません。
特定の仕方は
「東京都渋谷区○○町○丁目○番、宅地、一二〇・二五平方メートル」という書き方になります。
ところが、これを文章中に書くと何回も出てくることになります。
そこで、この物件の表示を別紙に記載したり、契約末尾に記載したりして、
契約文のなかには「別紙物件目録記載の」とか
「後記物件目録記載の」というように簡略化することもあります。
もっと簡略化するのであれば、
「別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という)」という書き方をして、
その後の土地の表現は「本件土地」という表示をすることになります。
◆文章表現は一義的に書く
◆契約書は裁判における証拠
契約の文章は書き方によって、
「ああもとれる」「こうもとれる」というような書き方をすると、
契約当事者の一方は「ああもとれる」というほうで契約を理解し、
他方は「こうもとれる」というほうで契約を解釈し、
調印はしたが、後日契約内容で争いが生じるということがあります。
契約の文章は他の意味にもとれるような多義的な表現は避け、
ひとつの意味にしかとれないような表現にすることが大切です。
契約の表現のなかでも、
一義的に表現しようと思っても困難な場合があります。
この場合は法律用語を使うことになります。
たとえば、契約の目的物について、
物理的に完全ではない、権利として完全ではない、
ということを表現する言葉に瑕疵(かし)という言葉を使います。
わかりやすく言えばキズのことですが、物がこわれているときも、
他人の権利で制限されているときも、
法的にキズなので瑕疵という言葉を使います。
次回は法律の館2階12号室へ!!!