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契約書はわかりやすく、一義的に書く(5/24)

契約書の表現はわかりやすく

契約は商取引だけとは限りません。

日常の私生活においても契約を結ぶ場合があります。

契約は約束を契ることですから、

専門家でなくとも約束した内容がわかることが望ましいのです。

難しく書くより平易な文章で、

必要最小限のことを落とさないように

書くということを心がけることです。

そういう意味からいえば、

契約書に難しい特別の用語

使わなければならないということはありません。


◆表現の省略化で読みやすくする



契約書は相対立する二人以上の当事者が約束するのですから、

お互いの権利義務を明確に書くことになります。

ところが、契約書のなかに「甲野太郎はどういう権利を取得する」とか

「乙野次郎はどういう義務を負う」などというように書き始めると、

文章のなかに「甲野太郎」や「乙野次郎」が何回も出てくることになり、

文章が長くなるばかりか、

かえって読みづらいことになります。

そこで、「甲野太郎を、乙野次郎をとして次のとおり契約を締結した」というように、

契約書の前文で契約の当事者を符号化して契約書のなかに

「甲」「乙」というようにして内容を書いていくのが一般的です


また、目的物件が不動産である場合は、

不動産を特定する要件を書かなければなりません。

特定の仕方は

「東京都渋谷区○○町○丁目○番、宅地、一二〇・二五平方メートル」という書き方になります。

ところが、これを文章中に書くと何回も出てくることになります。

そこで、この物件の表示を別紙に記載したり、契約末尾に記載したりして、

契約文のなかには「別紙物件目録記載の」とか

「後記物件目録記載の」というように簡略化することもあります。

もっと簡略化するのであれば、

「別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という)」という書き方をして、

その後の土地の表現は「本件土地」という表示をすることになります。



◆文章表現は一義的に書く


契約の文章は書き方によって、

「ああもとれる」「こうもとれる」というような書き方をすると、

契約当事者の一方は「ああもとれる」というほうで契約を理解し、

他方は「こうもとれる」というほうで契約を解釈し、

調印はしたが、後日契約内容で争いが生じるということがあります。

契約の文章は他の意味にもとれるような多義的な表現は避け、

ひとつの意味にしかとれないような表現にすることが大切です。


◆契約書は裁判における証拠
契約の表現のなかでも、

一義的に表現しようと思っても困難な場合があります。

この場合は法律用語を使うことになります。

たとえば、契約の目的物について、

物理的に完全ではない、権利として完全ではない、

ということを表現する言葉に瑕疵(かし)という言葉を使います。

わかりやすく言えばキズのことですが、物がこわれているときも、

他人の権利で制限されているときも、

法的にキズなので瑕疵という言葉を使います。



次回は法律の館2階12号室へ!!!


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