◆紛失した約束手形でも決済される
約束手形は流通を前提としています。
手形が転々と流通し、最終の所持人が手形を決済に回すことになります。
この最終の所持人が事実の適法な所持人かどうかは、
最終の所持人に至までの経過の問題になるので、
この過程を検討したりすることは手形の流通を阻害することになります。
手形の正当な所持人が誰であるかという判断は
手形面上から判断するような仕組みになっています。
この場合、手形の正当な所持人というのは、受取人、
受取人から裏書が連続している最終の被裏書人です。
この正当な所持人が手形を支払場所に支払期日に呈示すれば、
特別な事情のない限り手形は決済されることになります。
約束手形を紛失した場合、
まず警察署に紛失届を出しておくことです。
しかし、警察署に紛失届を出したからといって、
警察が手形の支払いを差し止めることはできません。
警察は手形の流通についての権利関係を
左右することはできないのです。
まして、現在の所持人が誰であるかは捜査してくれません。
警察ができることは紛失届があったことを証明してくれるだけです。
もっとも、警察署に届け出ておけば、
手形を拾った人が警察署に届けてくれたときは
警察が手形を返してくれることになります。
そういう意味で紛失届を警察署に出しておく必要はあります。
◆手形の振出人に協力を求める
約束手形を紛失したときは、
手形の振出人に手形が決済に回ってきたときに連絡をもらい、
支払いをストップしてもらうことです。
紛失者と振出人との信頼関係がある場合には、
再度手形を発行してもらい、
紛失手形が回ってきたときは紛失者のほうで
責任をもって処理し振出人に迷惑をかけないという
「念書」などを入れることもあります。
この場合に手形が決済に回ってきたときは、
振出人に支払金融機関を通して支払いを拒絶してもらい
異議の申し立てをしてもらうことになります。
振出人がいわゆる不渡りの扱いを受けないためには、
異議申し立て提供金として手形金額と同額の金額の預託を必要とします。
このお金は紛失者のほうで用意する必要があります。
手形を決済に回した所持人が訴訟を起こすこともあります。
この場合、振出人の代理人として、
紛失者が費用をもって弁護士を依頼することになります。
しかし、この手形の所持人が善意の第三者の場合は、
「手形金を支払え」という判決になってしまいます。
決済に回してきた者がどういう経過で取得したかによって、
振出人に決済を拒否してもらうかどうかの判断をする必要があります
◆手形を無効にするにはどうしたらよいか
約束手形を紛失したからといって再発行してくれることはまれです。
そこで、振出人に手形が無効になったら再発行してもらうという約束をしてもらって、
公示催告手続きをとることもひとつの方法です。
約束手形は公示催告の手続きをとることによって
無効にすることができます。
公示催告は簡易裁判所に申し立てて行ないますが、
公示する期間は六ヵ月必要なので申し立てて手続きが終わるまで八ヵ月ぐらいはかかります。
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