◆受取人は必要的記載事項である
◆受取人欄の記載がない手形手形には約束手形と為替手形がありますが、
現実に使われているのはほとんどが約束手形です。
そこで、約束手形を前提に説明することにします。
以下に手形というのは約束手形のこととして読んでください。
手形は振出人が手形を取得したものに対して、
将来の一定の日に、一定の金額を支払うという約束を書面にしたもので、
転々と流通することが予定された有価証券です。
手形は金銭債権が証券化したものですから重要な書類といえます。
したがって、手形法は手形といえるために一定の記載事項を定めて、
その記載が欠けているものは無効であるとしています。
手形の記載事項は次のとおりです。
1.約束手形であることを示す文字
2.一定の金額を支払うという約束
3.満期日
4.支払地
5.宛名人
6.振出日、振出地
7.振出人の署名
「宛名人」というのは、
法律では「支払いを受けまたは支払いを受けるものを指図する者の名称」
という表現になっています。
わかりにくいかもしれませんが、
簡単にいえば手形の受取人のことです。
受取人は裏書することによって受取人を指図することができます。
手形法では、受取人は手形が有効であるための記載事項になります。
受取人は手形が有効であるための記載事項であるとすると、
これが欠けると手形は無効になってしまいます。
ところが、実務では受取人が空白であっても手形は決済されています。
しかし、裁判になると手形の記載事項が欠けているということで、
手形上の権利が認められていません。
このように、裁判と実務のずれがあるため、
裁判を予定するときは手形の受取人欄の記載が必要になります。
◆受取人欄は補充する
手形の必要な記載事項が欠けたときに、
手形法は救済手段を設けている事項もあります。
ところが、受取人欄の記載が欠けているときの救済をしていません。
しかし、この記載のないものも直ちに有効にする方法があります。
というのは、手形の受取人欄はかならずしも振出人が
記載しなければならないものではないということです。
受取人が設けられているのに受取人欄の記載がないということは、
振出人が手形を交付した相手に受取人欄の
空白を埋めることを任せている(補充権を与えている)とも考えられます。
そこで現実には、手形の所持人は、
手形を受け取ったときに受取人欄が空白であれば、
そこに自分で自分の氏名を記入し、
または自分が次に手形を譲渡する相手を記入することができます。
記入されれば法律上も有効手形になります。
この補充がなされない手形は、
完成していない手形、未完成手形です。
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