約束手形の記載要件のうち、
一部が記載されていないものは約束手形としての
効力がないことになっています。
この約束手形の要件というのは、
金額、満期日、支払地(支払場所)、
支払日、振出日、振出地、受取人(宛名人)
などのことをいいます。
もっとも、これらの要件が欠けた場合でも、
満期日の記載がない場合は呈示するときが
満期日となる一覧払いの手形として扱われたり、
振出地は振出人の住所地というように
法律で補充を考えている場合もあります。
しかし、その他の要件が欠けた手形は未完成手形ということになります。
◆未完成手形と白地手形
記載要件の一部が書かれていない
(白地)約束手形は手形としての
効力がなく、未完成手形といわれています。
しかし、約束手形を振り出すときに、
振出人が記載要件の一部を記載しないで振り出して、
約束手形の所持人にその部分を補充してもらうという
趣旨で振り出されるものもあります。
このような補充権がついている約束手形を白地手形といっています。
この場合は手形所持人が白地を補充することができます。
一般に、約束手形の一部の記載がない場合は
白地手形といってよいでしょう。
約束手形の所持人は書かれていない部分
(白地)を補充することによって完成手形とすることができます。
◆所持人が補充権を行使する
白地手形は所持人が補充権を行使して、
白地部分の記載を補充することによって完成された手形
とすることができます。
ところで、所持人が受取人欄の白地を
間違って補充した場合はどうしたらよいでしょうか。
所持人が受取人の場合であっても、
本来は振出人の権限によって記載するのですから、
所持人の訂正印では訂正としての効力はありません。
この場合、誤記を訂正して振出人に
訂正印を押してもらうことが第一です。
次に、誤記のままで正しい受取人に対して裏書するという
便法も考えられます。
たとえば、受取人が甲であり、
甲と記載するところを乙と誤記した場合、
乙と記載したのは甲であり、乙の仮の名を甲と考えれば、
甲が乙の名で甲に対して裏書して
正しい甲を約束手形の正当な所持人とすることができます。
裏書を受けた者が、受取人欄空白のため
補充するときには受取人は第一裏書人と一致しなければ
手形の裏書が連続しなくなってしまいます。
これを誤って違う人の名を記入したときには
手形所持人は正当な所持人でなくなってしまいます。
ところが受取人の記載権限は手形の振出人ですから、
訂正したうえ、振出人に訂正印を押してもらう必要があります。
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