支払い命令というのは、
債権者の申し立てによって債務者に対し簡易裁判所が、
申し立てられた金銭や米、大豆などのように
種類的に定められる代替物、
有価証券などの一定の数量を
引き渡せという命令のことをいいます。
債権者の一方的な申し立てにもかかわらず、
簡易裁判所は相手方に
意見を聞くことなく支払い命令を出します。
相手方が支払い命令の送達を受けた日から
二週間以内に異議の申し立てをしない場合は、
債権者は、支払い命令に仮執行宣言をつけてほしい
という申し立てをして簡易裁判所に
仮執行宣言をつけてもらいます。
仮執行宣言がつけられた支払い命令は、
判決と同じ効力があるので、
これによって相手方の財産や債権などを
差し押さえることができることになります。
支払い命令に関する一連の手続きを
督促手続きといっています。
◆印紙は安く手続きも簡単
支払い命令は簡易裁判所に申し立てるだけで、
法定などによる口頭弁論手続きがないため、
素人でも簡単にできます。
また、申請書に貼る印紙(手数料)も
通常の訴訟の場合より安いので、
金貸しや月賦販売業者がよく利用しています。
◆支払い命令を利用できる権利
支払い命令の手続きは、
本当に権利があるかという審理がなく、
相手の意見もきかないで行なわれるので、
支払い命令が出せる請求権は限定されています。
建物の明渡し請求などはだめで、
一定の種類の物の一定の数量についての
請求権の場合だけです。
売掛金は当然支払い命令の手続きを利用することができます
◆相手方に送達できることが前提
支払い命令は一方的に出されるので、
相手方に送達して、
不服申し立ての機会が与えられることになっています。
通常の裁判ですと、相手方が所在不明の場合は、
裁判所の掲示板や官報に
掲載するなどの手続きをして
送達があったことにする公示送達という方法がありますが、
支払い命令の場合には、
このような送達方法は認められません。
支払い命令の場合は送達できることが前提になっています。
◆支払い命令に異議が出された場合
相手方は受け取った支払い命令について
不服であるという異議の申し立てができます。
この異議には理由は必要ありません。
異議の申し立てがなされると、
請求債権の額によって地方裁判所または
簡易裁判所の通常の訴訟に移行することになります。
売掛金などの債権でも納品した数量が不足であるとか、
不完全であるとかの争いがある場合は、
異議の申し立てが出される可能性が強く、
せっかく、支払い命令の手続きをしても、
かえって遠まわりになるので、
初めから通常訴訟をしたほうがいいということになります。
◆仮執行宣言の申し立てには
期限がある
支払い命令が相手方に送達されてから
二週間以内に相手方が異議を申し立てない場合、
仮執行宣言をつけてもらう申し立てをすることになります。
この申し立ては、申し立てができるようになってから
三〇日内にしなければなりません。
うっかりしてこの期間を過ぎてしまうと、
支払い命令は効力を失ってしまうので注意する必要があります。
|