約束手形の不渡りを二回以上出して
銀行取引停止処分を受けたり、
経営状態が悪化して支払いを停止した場合を
一般に「倒産」といっています。
また、約束手形の不渡りが一回でも出れば、
不渡りが相手方の資金繰りの
一時的手違いによる場合を除いては倒産に近いものです。
このようなときには、
たとえ代金が未払いであっても
支払い能力がないので債権の回収は困難です。
そこで考えられるのが、
取引先がもっている債権の譲渡を受ける方法や
商品の引き上げです。
商品の引き上げは、
金銭は無理なので物で回収しようというわけです。
商品といっても、自分が納入した商品もあれば、
第三者が納入したものもあります。
商品の引き上げは相手方の同意があれば可能です。
◆自分が納入した商品の引き上げ
相手方に自分が納入した商品が残っているとき、
この商品の引き上げを考えることは当然です。
しかし、商品を納入した以上、
代金支払いまでは所有権を自分のほうに留保するという
特別な意思表示をしていない限り、
その商品の所有権は相手方のものになっています。
商取引の場合、所有権が留保される
ということはあまりありません。
商品の所有権が留保されていれば、
商品として第三者に売却できないからです。
ですから、自分が納入した商品で代金が未払いであっても、
相手方の所有物ということになります。
そこで、商品を引き上げるには、
代金が支払われないことを理由に契約を解除することです。
といっても、倒産のようなときは、
解除の通知を出したりしていると、
その間に、他の債権者が自分が納入した
商品を引き上げていってしまう可能性もあります。
そうかといって、だまって納入商品を引き上げてくれば、
いくら自分が納入したものでも、
相手方の物をだまってもってくるのですから
窃盗になってしまいます。
このようなときには、相手方から
「代金を支払えないから商品を返す」という承諾をもらって
引き上げるということになります。
商品売買契約を解除する合意と原状回復
(契約がなかったもとの状態にもどすこと)を一度にしてしまうのです。
◆第三者が納入した商品の引き上げ
商品の引き上げといっても、
自分が納入した商品がなく、
他人が納入した商品しかない場合もあります。
自分が納入した商品でない場合は、
前述したような商品売買契約を解除する
というわけにはいきません。
この場合は、相手方から他人が納入した商品を
買い受けて商品の引き渡しを受け、
その買受代金と自分の納入した商品代金とを相殺する
という方法によって回収するということになります。
◆商品の引き渡し承諾書
前述した方法は口頭ですと、
盗まれたというような争いが生じるおそれがあるので、
相手方との合意があるという書類を
残しておくことも必要です。
自分が納入した商品の場合は、
「契約の合意解除と商品の返還書」にサインをもらって
商品を引き上げることであり、
他人の納入した商品の場合は、
「売買契約と商品の引渡書」にサインをもらって
引き上げるということになります。
|