売買契約においては、
売り主は買い主から注文された品物を納入する義務があります。
粗悪品というのは、この注文された品質、
性能に不十分なものということになります。
ところで、この注文された品物の品質や性能というのは、
いつ、どのようにして決まるのでしょうか。
通常は、売買の約束のときに、品質、性能は決められています。
売買の前提として「仕様書」「性能保証」が示されることは、
売買しようとする品質、性能を決めるためです。
このような特別の約束をしないで注文された場合は、
一般常識からみて普通の品質、
性能の品物を注文したことになります。
◆一般の売買契約のとき
売買契約を履行するときは、
売り主は買い主に対して、
約束された品物を納入する義務があります。
ただ品物を納入したというだけでなく、
約束された品質、性能のある品物でなければ、
売り主としては義務を履行していないことになります。
ですから、買い主には代金を支払う義務は
発生していないことになります。
かえって、買い主からは
「完全な品物を引き渡してもらいたい」
ということを言われます。
この場合は、粗悪品を引き渡し、
完全な品物を納入して代金を支払ってもらうことになります。
◆商人間の売買契約のとき
商人間の取引では、
商品を引き渡してかなり時間が経ってから
「あれは粗悪品だったから代金は支払えない」と言われても、
商品を納入した者が困ってしまう場合があります。
期間の経過によっては粗悪品だったかの
調査もできなくなる場合もあります。
また納入商品を他の商人から仕入れて納品したという場合、
仕入先には代金は支払済ということもあります。
また、その先は他の商人から仕入れている商品かもしれません。
そうなってくると、ひとつの苦情が連鎖反応をおこし、
商取引は円滑にいかなくなってしまいます。
そこで、商人間の売買取引の場合には、
買い主は商品を受け取ったときは
遅滞なく商品を検査しなければならないというルールになっています。
そして、商品にキズがあったり数量が不足しているときは、
すぐに売り主に通知しなければなりません。
買い主がこの検査や通知をしなかったときは、
たとえ納入された商品にキズがあっても、
買い主は文句を言えないことになっています。
ですから、代金支払いを拒絶することはできません。
このように、商人間の場合は、
検査通知を怠ったときは粗悪品を理由に売買契約を解除したり、
代金をその分減額せよ、という請求や、
損害を賠償しろという請求もできません。
もっとも、買い主が検査してもすぐ発見できないような
商品のキズの場合で、
六ヵ月以内に粗悪品であることを発見したときには、
商品にキズがあったという通知をし、
売り主に責任を問うことができます。
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