「飲み屋のツケは一年過ぎたら払わなくてもいい」
ということがよくいわれます。
これは飲食代金債権が一年で時効になって消滅する
ということからです。
この時効という制度は、
古い昔のことを言い出されても困る
ということからできた制度です。
たとえば、飲食代を支払って領収証をもらっていても、
飲食代の領収証を何年も保存している
ということは考えられません。
それを請求されたときに、
支払っていても領収証は捨ててしまったりして
支払った証明ができないということもあります。
裁判になれば、飲食した事実は認められても、
支払った事実は証拠がないので
認められないということになって、
「飲食代を支払え」という判決になります。
これでは不合理です。
そこで、権利を行使しないで
一定期間放置したときには、
その権利は時効によって消滅するということにしたものです。
権利が消滅するという時効の期間は
権利の重要性によって違ってきます。
商品の売買代金債権の場合は、
消滅時効の期間は二年ということになっています。
◆二年経った商品代金の請求は可能
二年経った商品代金債権は消滅時効にかかります。
しかし、消滅時効にかかった商品代金債権を
裁判で請求したときに、
相手方が代金債務を認めて「支払う」というのであれば、
裁判所は「支払うな」ということは言えません。
ですから、債権そのものが消滅するという
絶対的なものでなく、古いことは証拠もなくなっているし、
権利も行使しなかったのだから、
請求されたものが「消滅時効にかかっている」
ということを主張したときは、
消滅したという扱いにしようということです。
そういう意味で、時効というのは裁判上で
採用できる抗弁ということがいえます。
時効を授用するかどうかは
債務者の気持ちにかかっているわけです。
◆時効の抗弁をなくすには
払わなくてよい債務を払ってくれるということはなかなかありません。
消滅時効にかかった債権を請求するときは、
まず支払いを拒絶されると思わなければなりません。
また、口頭で催促すると、
「そのうち払う」と言って債務があることを認めていても、
裁判になると「時効によって消滅している」
という抗弁がなされます。
ですから時効を中断させることを考えることが大切です。
「そのうち払う」と言っていても支払わないのは
お金に困っていることが多く、
そういいうときは、「すぐに支払ってくれというのではない、
○○までに支払うということでいいから」
という申し入れをして、
これを書類にしてサインしてもらうということもできます。
相手方も債務はあるのだし、
猶予もついたのだからということで
サインしてくれることになるわけです。
これを「承認」といいます。
承認があれば、時効にかかった債権も生き返ります。
承認されたといっても消滅時効期間は、
このときから再度進行するので注意しなければなりません。
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