農地についてはいろいろな規制があります。
規制を受けるのは農地の所有権の移転、
地上権、永小作権、質権、賃借権、
使用賃借による権利などの使用収益をする
権利設定などです。
また、移転するときは、
原則として農業委員会(場合によっては知事)
の許可がなければできないことになっています。
しかし、抵当権は許可がなくてもつけることはできます。
というのは、農地法の規制は、
農地の所有か、現実に農地を使用する権利
について行なっているのに対し、
抵当権は農地の担保価値の把握であって、
まだ所有権の移転、
使用権の設定または移転にあてはまらないからです。
抵当債務の弁済のない場合は、
農地を競売して売得金から弁済を受けることもできます。
しかし、競売手続きで競落することは、
農地の売買にあたるので
農業委員会の許可が必要となります。
この許可には制限があるため、
競落人が限定されたり、
競落人がいなかったりという問題があり、
競落金額が安くなってしまいます。
ですから、農地を抵当にとっても
担保価値は低いのが現実です。
農地以外の土地があれば、
そのほうに抵当権を設定したほうがベターです。
もっとも、担保にする物件が農地しかない
というときはやむを得ません。
◆農地の競売の申し立て
農地を売買するときは農地法によって
農業委員会の許可が必要になっています。
しかし、抵当権の実行として
農地の競売申し立てをするときには、
農業委員会の許可はいりません。
競売の申し立て自体は売買にあたらないからです。
◆農地の競落人の制限
競売手続きにおいて、
農地を競落することは農地の売買にあたるので、
農業委員会の許可がなければなりません。
裁判所も農業委員会の許可があったときに
競落許可決定を行なっています。
現実には、競落しようとする人は、
裁判所に対して、農業委員会の発行した
「農地の買受適格証明書」を提出することになっています。
「農地の買受適格証明書」というのは、
農地の売買について、
農業委員会が競落しようとする人が
農地取得資格があるかどうかを事前に審査し、
あてはまると判断したものです。
この証明書は農業委員会に申請して交付を受けますが、
農業委員会が証明書を与えるためには
農地法上で売買が認められる場合に限ります。
農地法の基準によれば、競売にかかった農地が、
小作地であるときは、
競落する買受適格者はその農地の小作人、
その世帯員、その農地を耕作している農業生産法人に限られます。
また、自作農の農地の場合は
一定の基準にあてはまった農家ということになります。
◆ 競落人がいない場合
前述したように、
農地の競落人は一定の資格をもっている者に限定されるので、
競落人がいない場合も出てきます。
この場合は農林水産大臣に対して、
国が競売にかかった農地を買い取るよう
申請することになります。
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