いわゆる「不動産の権利証」というのは、
ある不動産について、
その者を権利者として登記したという証明です。
登記所(法務局)の登記済みであるという
印が押されています。
「登記済証」「登記済権利証」ともいっています。
その人が権利者であるという証拠です。
一般には所有権の「登記済証」をいっているようですが、
登記済証は抵当権やその他の権利についてもあり、
所有権についてのものとは限りません。
不動産上の権利の設定や移転の登記には
登記済証が必要になります。
たとえば、不動産を売って不動産の登記名義を
買い主にするときに、
登記所に登記申請書を提出しますが、
これには登記済証を添付することになっています。
登記済証は不動産の所有者であることを
証明するという意味があります。
◆不動産の権利証は担保になるか
担保として預かるのは「不動産の所有権についての登記済証」です。
債権者が抵当権など担保権の設定登記手続きをしないで、
その代わりに、
所有者から登記済証を取り上げておくということは、
よく行なわれています。
登記済証を取り上げても、債務者である所有者が、
その不動産について第三者の権利を設定したり、
第三者に売却しても所有権移転登記ができないように
したという意味しかありません。
積極的に担保権を設定したわけではないからです。
しかし、債務者が登記済証がないからといって
第三者の権利の設定、所有権の移転登記の登記をしなくても、
他の債権者が、その不動産を差し押さえることはできます。
この場合、たとえ登記済証をもっていても
他の債権者に優先する権利はありません。
◆不動産の権利証がなくても登記はできる
不動産の登記申請については、
「登記義務者の権利に関する登記済証」を
添付するのが原則ですが、登記済証が消失したり、
紛失したりした場合、登記ができなくなってしまいます。
そこで、登記済証が滅失した場合でも
登記ができるような手続きがあります。
これが「保証書」による登記です。
保証書を登記済証の代わりに添付するわけです。
保証書は、登記手続きをする登記所の管轄のなかに
不動産の登記を受けたことがある人
(二人以上の成年者)が登記義務者が人違いでないことを
保証するものです。
ですから、債務者は、
しようと思えば登記済証がなくても
所有権移転登記や抵当権設定登記ができます。
登記済証を取り上げたからといって、
債務者が権利の移転や他の登記をしないという
保証はありません。
◆登記済証には担保としての意味はない
担保の代わりに登記済証を取り上げるというのは、
結局、他の登記を行なわせないという消極的なもので、
自分自身の債権の確保の手続きは何もされていない
ということになります。
確かに抵当権設定などの債権確保の手続きには
印紙などの出費が必要ですが、
費用にこだわっていると、
自分の債権の確保ができなくなってしまうこともあります。
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