ようこそ法律の館4階18号室(分割払いの回収の部屋)へ
分割払いの回収が約束手形の場合、
契約書を併用する
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◆分割払いの支払いは多額の場合に利用される

債権が回収できなくなったとき、

債権者は債務者に分割払いを認めることによって

債権回収をしようとすることがあります。

一回で支払うには多額過ぎて

債務者の資力からいって無理だが、

何回かに分割してなら債務者も支払えるということを

利用します。

分割払いは債権回収ができなくなったときだけでなく、

自動車を買うなど売買金額が大きいときの代金支払い、

土地建物を買う資金を借り入れた場合の返済方法

利用されています。

 

約束手形による分割金の支払い


分割金の支払いが約束手形で行なわれることがあります。

分割金を支払う者に、

分割金の支払期日を満期日とする

約束手形を分割の回数分振り出し交付させるのです。

約束手形のメリットは、支払期日のたびに

いちいち債務者のところに催促したり、

集金する手間が省けるということです。

また債務者は、約束手形が不渡りとなったときには

他の債権者にも知れることになるので、

なんとかして決済しようと努力するということがあげられます。

約束手形ですから、

債権者は約束手形を銀行に振り込み決済を

待つだけでいいのです。


◆約束手形だけで
不渡りになったらどうなる

代金回収にしろ、代金支払いにしろ、

分割金支払いのために約束手形が

振り出されたのですから、

契約書など面倒なものはいらないように

思っている人が多いようです。

確かに手形が不渡りになれば振出人にとっては

大きなダメージですから、

契約書より手形に大きな価値を認めるのも当然です。

しかし、手形が不渡りになったときはどうでしょうか。

まず満期日がきたものは決済に回し、

不渡りになれば手形訴訟を起こしたりして、

債務者の財産を押さえる前提条件があります。

しかし、満期日のきていない手形については

このようなことはできません。

一回不渡りになったからといって、

満期日のきていない手形はまだ請求できません。

この間に、他の債権者が判決をとったりして

債務者の財産を差し押さえ、配当にあずかるのを、

自分だけは手をこまねいて見ていなければなりません。

「そんなバカな」と言われるかもしれませんが、

それが現実です。

では、自分も訴訟を起こせばいいだろうといっても、

満期日のきていない手形金の支払いを請求できない以上、

訴訟をすることは無理です。

できるとすれば、手形金を満期日に

支払えということぐらいです。

債務者に期限の利益があるから仕方ありません。

やはり待っていなければなりません。



◆約束手形に契約書を併用する

 

分割金支払いの約束手形は、

売買代金などの債務の支払いのために

振り出されたもので、必ず手形を振り出すに至った原因、

売買とか、債務弁済の約束があるはずです。

この原因関係について契約書を作成して、

分割支払いの約定を入れて、

これに基づいて手形が振り出されたことを明確にしておき、

そのうえで、分割金の支払いを一回でも怠ったとき

(手形が一回でも不渡りになったとき)は、

期限の利益を失い残額を一括して支払う

(残りの手形は期限がきていなくても期限が到来する)

という約定をしておくことです。

こうすれば、手形が不渡りになったとき、

残りの手形金額を請求する足掛かりとすることができます。

 

次回は4階19号室へ!!!

 


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