債権が回収できなくなったとき、
債権者は債務者に分割払いを認めることによって
債権回収をしようとすることがあります。
一回で支払うには多額過ぎて
債務者の資力からいって無理だが、
何回かに分割してなら債務者も支払えるということを
利用します。
分割払いは債権回収ができなくなったときだけでなく、
自動車を買うなど売買金額が大きいときの代金支払い、
土地建物を買う資金を借り入れた場合の返済方法に
利用されています。
◆約束手形による分割金の支払い
分割金の支払いが約束手形で行なわれることがあります。
分割金を支払う者に、
分割金の支払期日を満期日とする
約束手形を分割の回数分振り出し交付させるのです。
約束手形のメリットは、支払期日のたびに
いちいち債務者のところに催促したり、
集金する手間が省けるということです。
また債務者は、約束手形が不渡りとなったときには
他の債権者にも知れることになるので、
なんとかして決済しようと努力するということがあげられます。
約束手形ですから、
債権者は約束手形を銀行に振り込み決済を
待つだけでいいのです。
◆約束手形だけで
不渡りになったらどうなる
代金回収にしろ、代金支払いにしろ、
分割金支払いのために約束手形が
振り出されたのですから、
契約書など面倒なものはいらないように
思っている人が多いようです。
確かに手形が不渡りになれば振出人にとっては
大きなダメージですから、
契約書より手形に大きな価値を認めるのも当然です。
しかし、手形が不渡りになったときはどうでしょうか。
まず満期日がきたものは決済に回し、
不渡りになれば手形訴訟を起こしたりして、
債務者の財産を押さえる前提条件があります。
しかし、満期日のきていない手形については
このようなことはできません。
一回不渡りになったからといって、
満期日のきていない手形はまだ請求できません。
この間に、他の債権者が判決をとったりして
債務者の財産を差し押さえ、配当にあずかるのを、
自分だけは手をこまねいて見ていなければなりません。
「そんなバカな」と言われるかもしれませんが、
それが現実です。
では、自分も訴訟を起こせばいいだろうといっても、
満期日のきていない手形金の支払いを請求できない以上、
訴訟をすることは無理です。
できるとすれば、手形金を満期日に
支払えということぐらいです。
債務者に期限の利益があるから仕方ありません。
やはり待っていなければなりません。
◆約束手形に契約書を併用する
分割金支払いの約束手形は、
売買代金などの債務の支払いのために
振り出されたもので、必ず手形を振り出すに至った原因、
売買とか、債務弁済の約束があるはずです。
この原因関係について契約書を作成して、
分割支払いの約定を入れて、
これに基づいて手形が振り出されたことを明確にしておき、
そのうえで、分割金の支払いを一回でも怠ったとき
(手形が一回でも不渡りになったとき)は、
期限の利益を失い残額を一括して支払う
(残りの手形は期限がきていなくても期限が到来する)
という約定をしておくことです。
こうすれば、手形が不渡りになったとき、
残りの手形金額を請求する足掛かりとすることができます。
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