ノウハウというのはどんなものをいうのか、
ということについてはいろいろな考え方がされてきました。
どちらかというと、工業の生産工程や産業上の利用について
必要な知識・経験で秘密にされるものが
ノウハウだという考え方が多かったようです。
現実に特許のライセンスを与えるときには、
その利用についての知識・経験を
抱き合わせにしていました。
しかし、情報化社会になってくるとかならずしも
工業とか産業とかの技術の利用だけでなく、
営業上の情報もノウハウとして保護されるべきだ
ということになってきます。
したがって、現在ではノウハウというのはこれらのものを含めて、
企業が秘密としている知識・経験といっていいと思います。
◆ノウハウは法律でどう守られるか
ノウハウは秘密を特色としているので、
これが公になるとノウハウの意味がなくなってしまいます。
しかし、法律で守られるためには、
何が秘密なのか明確にする必要があります。
そうでないと法律も保護のしようがないからです。
したがって保護の仕方は難しい問題で、
かつては秘密にしていた技術やデータが盗まれた場合に、
「データを記録した物を盗んだ」とか
「他人の住居に不法に侵入した」という点をとらえて、
窃盗罪とか住居侵入罪ということで
罰するということを考えてきました。
しかし、情報化社会になってきて、
現在ではノウハウも財産的価値があると
認められるようになりました。
そこで、ノウハウも法律で保護されるべきだということから、
不正競争防止法が改正され、
平成三年六月一五日から企業秘密も
ノウハウとして正面から法律で保護されることになりました。
◆ノウハウの管理はどうなっているか
ノウハウは法律で保護されるといっても、
その内容は秘密ですからノウハウが侵されてからでは
公になってしまいます。
そこで、侵される前に事前に防止する必要があります。
防止の方法は、そのノウハウが文書や
磁気テープなど物体に記録されている場合は、
その物体が盗まれないような保管方法を
とっておく必要があります。
また、ノウハウをライセンス契約でライセンスを
与えたものに開示する場合には、
これを第三者に知らせないという義務や
盗難防止措置をする義務を負わせることが必要です。
これらのほか、常にノウハウが漏れていないか
情報を収集することも必要です。
◆従業員の転職とノウハウ
ノウハウの管理を十分にしていても、
退職した従業員がノウハウを知る立場にあったときは、
これを利用されてはノウハウが侵害されることになります。
そこで、従業員が退職したときは、
従業員が職務上知ったノウハウを利用しないような措置を
とっておくことが必要になります。
ノウハウを知る立場に勤務する者には、
退職後も、職務上知ったノウハウを自ら利用したり
第三者にも開示しないという約束を取りつけておく必要があります。
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