ようこそ法律の館5階07号室(職務上での特許の部屋)へ
会社の職務上で発明された
特許は誰の権利か
(6/11)

◆職務上の発明とはどういうことか

会社の仕事として発明研究に従事している

従業員が発明したとき、

その発明を「職務発明」または

「従業員発明」といっています。

特許法は個人の発明を中心に規定をおいていますが、

現実には技術は発展し、

複雑化してきており、

個人の発明よりは企業組織内の体系的

組織的な研究による発明が増える傾向にあります。

ところが、特許法には職務発明について

抽象的な一カ条しか規定をおいていないので、

具体的な場合に問題が生ずる場合も多いようです。

たとえば、上司の指示を受けないで発明したときは、

従業員の職務範囲に入るのかという問題もあります。

裁判所はこのような場合、

従業員と企業の関係で職務範囲とみることが

妥当と思われるときは職務範囲としていますが、

結局ケースバイケースで判断するということになります。

◆職務上の発明の権利者は
誰になるか

 

従業員が、企業のなかで与えられた

業務の範囲で発明したとき、

その発明は従業員の発明になります。

しかし、仕事の一環としてなされた発明だから、

この発明について誰が出願し特許権者になるかは、

企業と従業員との間で調整しなければなりません。

そして、従業員が特許権を取得することになったとしても、

使用者である企業は、

その特許権について通常実施権をもつことになっています。

企業は発明を利用するために従業員に給料を払い、

設備、その他の費用を使って研究させているのですから

当然のことといえるでしょう。

◆使用者と発明した従業員との関係


現在の特許法は、発明者は自然人であって

企業ではないという建て前をとっています。

したがって、企業のなかの従業員の組織体が発明をしても、

発明者は、発明に加わった一人

または何人かの従業員が発明の権利をもつことになります。

企業は、この発明について従業員個人から

特許を受ける権利を取得して

特許権者になるしかないのですが、

前述したように、職務発明の場合は従業員が特許をとっても、

企業は通常実施権があるから

その特許を使用することができます。

しかし、企業が従業員から職務発明について、

特許出願の権利や特許権を譲り受けたり、

専用実施権を設定したりする場合、

その従業員に給料を払っているからといって、

タダで権利を譲り受けたり、

設定したりすることは妥当ではありません。

そこで、たとえ契約や勤務規則で職務発明について、

特許出願の権利や特許権を企業が

譲り受けることになっていたり、

専用実施権を設定することになっていても、

この場合は職務発明をした者は

「相当の対価」を受ける権利をもつことになっています。

しかし、この「相当の対価」が

いくらかということはなかなか難しい問題です。

あらかじめ勤務規則で決めておかないと後始末が難しくなります。

次回は5階08号室へ!!!

 


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