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書籍や雑誌の題号は商標か
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◆書籍の題号と性質

「題号」というのは書籍につけられる名称

「題名」のことをいいます。

そして、書籍には単行本だけでなく定期刊行物などの雑誌や、

辞書などの編集著作物などがあります。

これらにつけられる名前が題号です。

題号は一見すると商標のように思えますが、

これらの性質をそれぞれ見ていくと、

題号だから商標だということは簡単にはいえません。

商標の要件から検討して、

題号によってその商品が

A社の商品とB社の商品は違うものか、

題号がその会社の製品だという出所を

表示する機能をもっているか、

などの点から検討して商標になるかどうかを

区別していくことになります。

◆単行本の題号

単行本の題号は本の内容をあらわしています。

たとえば、モーパッサンの『女の一生』というとき

『女の一生』は著作物の題名で、

どこの出版社の商品という区別されるものではありません。

A出版社からもB出版社からも

『女の一生』という単行本が売り出されることもあり、

本の題名は商標の要件である出所や他社の商品

区別する役割はありません。

このように、単行本の題名は

商標の要件を備えていないので商標とはいえません。

仮に単行本の題名を商標として登録できるとすると、

ほかの人は同じ題名の著作物を作れなくなって不都合です。

また、商標は更新登録ができるので、

更新すれば永久に続き、

著作者が死亡して五〇年を過ぎて著作権がなくなっても、

商標の効力が続くことになって

不合理なことになってしまいます。




◆定期刊行物の題号

週刊誌や月刊誌などの定期的に発行される雑誌の題名は、

単行本の場合とは少し事情が違います。

まず、月々の雑誌の内容が違っています。

それでも題名だけは同じです。

違うとすれば発行時期の区別のために

「○月号」「○月○日号」としているくらいです。

これを考えると、雑誌などの場合は

「○○出版社」の雑誌の名が

「○○」という題号ということを意味しています。

雑誌の題号はA出版社が編集した商品だということ、

そして、B社の商品と違うということをあらわす

「しるし」ということができます。

ですから、雑誌などの定期刊行物の題名は

商標にあたることになります。

 

◆辞書などの特殊な題号

 

辞書の場合は、単行本と同じような性質もあり、

また、定期刊行物と同じような性質を

備えている場合もあります。

たとえば国語辞典についてみると、

定期刊行物のように編集著作物といえます。

一人でまとめた辞書も編集著作物といってよいでしょう。

しかし、国語辞典というものは

複数の出版社から出版されるので、

特別の表示がない限り、

定期刊行物のようにA社の商品というような

他社の商品と区別する働きがあるかは疑問です。

ですから、題名のつけ方によっては

商標的なものとそうでないものと区別されます。

ただ『国語辞典』というだけでは出所を特定する性質もなく、

また他社の商品との区別もつかないので

商標にはなりえません。

しかし、『○○の国語辞典』『広辞苑』などは

商標の要件を備えることになり商標といえるでしょう。



次回は5階11号室へ!!!

 


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