ようこそ法律の館5階20号室(商品の詰め替えの部屋)へ
買った商品を詰め替えて、
もとの商標をつけることは
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◆商品の詰め替えは侵害にならないか


小売業者が商品を買って展示したり販売することは

商標権の行使ですが、

製造業者が小売業者によって商標を使うことは

当然予定されている行為ですから、

商標権の侵害にあたりません。

それでは、小売業者が製造者から商品を買って、

この商品を小分けして詰め替え、包装しなおして、

その商品の商標をつけて販売したり、

展示したりするということは商標権の侵害になるのでしょうか。

商標権者が登録した商品について

商標を独占的に使用できる権利であるという点からみれば、

小分けした商品にラベルをつける行為は

商標権の行使にほかなりません。とすれば、商標権を侵害しているよう

にみえます。

しかし、商品を販売した以上、

商標権を使いつくしてしまったので、

これを買った人がその商品にその商標を使う分には

商品の出所をいつわるわけではないので、

問題がないという考え方もあります。

とすれば商標権を侵害しているということにはなりません。

◆商標の役割との関係は

商標権を侵害しているかどうかということは、

ひとつの基準として商標がもっている役割

損なうものかどうかという立場から考えることが大切です。

商標の役割は、その商品の出所を表示する役割、

たとえばA社の製品であるという主張のほかに、

他社の商品と区別するという役割、

その会社の商品であるということから

品質を保証するという役割もあります。

そこで、商品を小分けにすることが

商標の役割に障害を及ぼすかというということが問題です。

小分け詰め替えは、やはりA社のラベルをつけるのですから

出所を表示する役割は侵害されていません。

また、他社の商品との区別の役割も侵されてません。

問題は品質保証機能です。

たとえば、香水の場合、

小分けすることによって香りが減少することも考えられます。

清涼飲料などで炭酸の入っているものは

ガスが抜けてしまいます。

また食品の場合には、

小分けすることによって腐敗したり

品質が変わることも考えられます。

このように、小分けすることによって

品質が変わるものについては、

小分けすることは品質保証の役割を侵害し、

商標権者の信用を害することになり、

商標権を侵害することがはっきりします。

◆詰め替えが品質に関係しないとき

商品を小分けして詰め替えても品質に

影響のない商品については、

詰め替えは商標権の役割を侵していないので、

商標権の侵害でないということがいえそうです。

現実に、詰め替えによって商品の品質に影響ないようなものは、

商標権者も黙認している場合があります。

ところが、裁判例の多くは、

商品を小分けして詰め替える行為は

商標権の侵害と考えているようです。

それは、商標がつけられた商品は、

つけられたままの形で流通することを期待しており、

法の目的からもそのように考えるべきだというのです。

この考え方に立つと、どんな商品でも

小分けして詰め替えることは

商標権の侵害になるということになります。

 


 


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