小売業者が商品を買って展示したり販売することは
商標権の行使ですが、
製造業者が小売業者によって商標を使うことは
当然予定されている行為ですから、
商標権の侵害にあたりません。
それでは、小売業者が製造者から商品を買って、
この商品を小分けして詰め替え、包装しなおして、
その商品の商標をつけて販売したり、
展示したりするということは商標権の侵害になるのでしょうか。
商標権者が登録した商品について
商標を独占的に使用できる権利であるという点からみれば、
小分けした商品にラベルをつける行為は
商標権の行使にほかなりません。とすれば、商標権を侵害しているよう
にみえます。
しかし、商品を販売した以上、
商標権を使いつくしてしまったので、
これを買った人がその商品にその商標を使う分には
商品の出所をいつわるわけではないので、
問題がないという考え方もあります。
とすれば商標権を侵害しているということにはなりません。
◆商標の役割との関係は
商標権を侵害しているかどうかということは、
ひとつの基準として商標がもっている役割を
損なうものかどうかという立場から考えることが大切です。
商標の役割は、その商品の出所を表示する役割、
たとえばA社の製品であるという主張のほかに、
他社の商品と区別するという役割、
その会社の商品であるということから
品質を保証するという役割もあります。
そこで、商品を小分けにすることが
商標の役割に障害を及ぼすかというということが問題です。
小分け詰め替えは、やはりA社のラベルをつけるのですから
出所を表示する役割は侵害されていません。
また、他社の商品との区別の役割も侵されてません。
問題は品質保証機能です。
たとえば、香水の場合、
小分けすることによって香りが減少することも考えられます。
清涼飲料などで炭酸の入っているものは
ガスが抜けてしまいます。
また食品の場合には、
小分けすることによって腐敗したり
品質が変わることも考えられます。
このように、小分けすることによって
品質が変わるものについては、
小分けすることは品質保証の役割を侵害し、
商標権者の信用を害することになり、
商標権を侵害することがはっきりします。
◆詰め替えが品質に関係しないとき
商品を小分けして詰め替えても品質に
影響のない商品については、
詰め替えは商標権の役割を侵していないので、
商標権の侵害でないということがいえそうです。
現実に、詰め替えによって商品の品質に影響ないようなものは、
商標権者も黙認している場合があります。
ところが、裁判例の多くは、
商品を小分けして詰め替える行為は
商標権の侵害と考えているようです。
それは、商標がつけられた商品は、
つけられたままの形で流通することを期待しており、
法の目的からもそのように考えるべきだというのです。
この考え方に立つと、どんな商品でも
小分けして詰め替えることは
商標権の侵害になるということになります。
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