●ニセ「金丸信」が電話で「200万円貸してくれ」
(6/22)

まだご健在のころ実際にあったはなしや!

知り合いから電話がかかってきて疑う人間はまずおらへん。

そやけど、用意周到な声色詐欺やったら・・・・。

◆政界のドンが200万円を無心?

「はよ電話をつなげっ」

受話器の遠くから聞こえるその声だけでAさんは

それが「先生」やと確信したとゆう。

「事情」を説明しとった「秘書」にかわって

「先生」が親しげにいったちゅうわけや。

「やあ、久しぶりやね」。

平成5年にこないな電話を受けたAさんは

一人暮らしの76歳の女性

亡くなりよった夫の学生時代の柔道部の先輩なんやし、

同じ下宿で生活を共にしたこともある「先生」とは、

当時巨額脱税事件で起訴されとった「ドン」こと金丸信氏。

夫の葬儀には金丸氏自らがわざわざ駆けつけるほど親しく、

金丸事務所に政治献金もしとった間柄。

ところが「先生」の電話は、

「200万円工面してくれ」ちゅうお願いやった。

200万円・・・政界のドンにしては、

ずいぶんとみみっちい話や。

せやけど、Aさんは声を聞いてすっかり信用しきっとったため、

数日後に訪れた金丸事務所から依頼を受けた

「調査会社調査員」とやらに200万円渡してしもたんや。

一人3役のモノマネ電話!

実はこのとき当の金丸氏は脱税事件で拘留中の身やった。

ニセ金丸信の声の主はN(当時43歳)

Nは、まず金丸氏の秘書になりすまして

Aさんに電話をかけ、

「先生」の窮状を切々と30分にわたって訴えたちゅうわけや。

ほんで次に「はよ電話をつなげっ」

と金丸氏自らの声色で登場したのや。

「後でうちの調査員が伺うのでよろしゅう頼むよ」。

その言葉どおり「調査員」と名乗る男が、

Aさん宅に現れるちゅうわけや。

もちろん、これまたNやった。

まんまと200万円せしめて味をしめたNは数日後、

またも金を無心する電話をかけるちゅうわけや。

「ボールペンまで差し押さえられてしもた」

さすがに変に思うたAさんが、

金丸事務所に問い合わせたところ、

ようやっと詐欺やと判明したちゅうわけや。

なんぼ起訴されたとはいえ、天下の金丸信が、

「200万円」を恵んでくれやらなんやらと電話してくることありえへん。

余計なお世話やけど、金丸氏の脱税額は10億円!なんや。

200万円やなんて「お車代」程度のもんでっしゃろ。

ほんでもAさんが電話を信用してもうたんは、

金丸氏の声色が似とったばっかりでなく、

自分の個人的なことをずいぶん知っていそうな口ぶりやったからや。

ここに犯人のテクが光るちゅうわけや。

Nは別に政界関係者でも何でもなく、

一人暮らしの女性宅を狙う空き巣の常習犯やった。

というても、単なる行き当たりばったりの空き巣とは違い、

まずは興信所の調査員やと名乗って「聞き込み」を重ね、

忍び込み先を物色するゆう手の込んだ下見をする知能犯。

Aさんとこについても、興信所の調査やいうさかい、

近所のオバサンらがついペラペラ喋ってしもたに違あらへん。

Nは「聞き込み」で偶然、

Aさんが金丸氏と面識があることを知って

モノマネ電話を思いついたちゅう。

きっと金丸氏の映っとるビデオやらなんやらを見ながら

一人練習に励んだのでっしゃろ。

「やぁ、久し振りやなぁ、・・・ちょぃ高め? "やぁ"?"やぁ!"

・・・オッケー?キュルキュルキュルキュル

(テープを巻き戻す音)"やぁ!・・・こないなもんかぁ? 

あ、顔は似せんでもいいんか」

なんでやろかわいもよー知らんけど

鏡に向かって顔マネまでしとったりして。


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