●悪徳自動車金融とは
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「乗ったままOK!即日融資」

「車でお金貸します」


どなたはんしもがいっぺんや二度は街中でこないな看板を

見かけたことがあるやろ。

自動車担保融資と呼ばれるこの金融業は、

文字通り車を担保に融資を行うもんや。

無担保無保証が原則のサラ金は例外として、

融資の際に担保を求められはるんは金融業者の常識

仮にそれが車やったとしたかておかしくはあらへん。

せやけどダンさん、金の動く所に闇ありき。

その原則はこの業界にも当てはまるちゅうわけや。

利息やなんてせいぜい月に数万円

対して、客から奪い取った高級車を中古車業者に流したら、

数十万単位のまとまった金になるちゅうわけや。

狙いはどちらかわかるやろ、と。

担保である以上、支払いが滞った時点で債権弁済のために

売却するんは至極当然。契約に基づいた正当な行為なんや。

せやけど、ハナから奪い取りが目的とあらば、

そこには悪徳金融の狡猾な手口が

用いられはることになるちゅうわけや。

 

◆尻に火がついた奴は目前の50万円を選ぶ

車を担保をして金を貸す場合、

業者には2種類の選択肢があるんや。

譲渡契約書、印鑑証明、車検証、合鍵やらなんやらを預かる、

いつでも売却できる形にしておき、

車はそのまんま客に乗らせておくパターンや。

なんちうか、ようみなはんいわはるとこの

「乗ったまんま融資」の広告文句は

前者に相当するちゅうわけや。

やけど、業者にとっては乗ったまんま貸すより

預かりのほうが断然ええ。

事故を起こされたり、盗難にあったりしたら、たまりまへん。

乗ったまんまやったら、「リース料」、

預かりやったら「保管料」の名目で、

いずれにせよ破格の手数料を取ることに

変りはあらへんのやが、

ほんでもやっぱり担保そのもんが手元にない状態は

リスクが高いので避けたいと業者はぬかす。

一方の客にしてみれば、足を奪われるんは辛いちゅうわけや。

結局、「乗ったまんま」の文句で釣った客を

どうええくるめるかが最初のポイントとなるちゅうわけや。

その策として2つの方法を挙げたちうわけや。

「いっちゃんはじめに、こうぬかす。

お客はん、どないな運転をされるか知らんけど、

今日の帰りに事故に遭わない保証はおますか。

ないでしょう 。これでシュンとなる」

さらに、貸し出す金額にも差をつけるわけや。

預かりやったら50万出すが、

乗ったまんまやったら20万や。

さあ、どっちがええ。

「車で金を借りに来てる時点で、

すでにそいつはごっつう厳しい状態に追い込まれてんねん。

そないな奴が眼の前に50万と20万あって、

どっちを選ぶかってこと。答えは決まっとる」

車が単なる移動道具の一つと認識されとる国と違い、

大日本帝国では「車が財産」ちゅう意識が強いわけや。

ましてや高級車を転がす者やったら、

その思いはひとしおなんや。

その財産を担保にしてまで金を借りたがる

人間の置かれた状況とは、如何なるもんか。

1万円でも2万円でもようけ借りたいと

願っとることは明らかなんや。

結果、渋々ながらも客は車を手放す。

金利は月8%。50万円借りれば利息だけで

月に4万円の支払いや。

いったいどなたはんがそないな暴利を支払えるゆうんか。

しかも車を取り戻すには、

元金をも用意せならなないんや。

「やから潰れるんは最初からわかっとるんや。

十中八苦潰れはります。」

やったらば当ヤカラもわかっとるはずやろ。

冷静に考えれば、そう思うわ。

せやけど彼らは、いつか取り戻せると信じとるからこそ、

担保として差し出すのや。

業者は客に対して「この利率は質屋と同じやから」と説いて

安心させるのやちう。

皆それを聞きほっと安心するんやそうや。

月八分。確かに数字だけを見れば

質屋と同じかもしれへん。

が、生活上不要な、

すなわち無くなっても不自由のない物品

ぶちこむ質屋と'財産'である車を

担保とする自動車金融とでは、

客の置かれとる立場が異なるわけや。

流されることを阻止したろとおもう者にとって、

月8%の利息はごっつい重いちゅうわけや。

 

所有権を移せないはずの「ローン中も可」の意味


客が利息を払えなくなったら、

預かった車は名義変更の後、

中古車市場へと流れるちゅうわけや。

その売却価格と客への貸し出し金額(貸し倒れ額)

の差が儲けや。

「中古車屋は殆んど専属契約みたいなもんで。

向こうさかい何年式の何々へんかいなって

きいてくるぐらいやから」

確かに、このショーバイを続ける上では、

中古車屋との密接な関係は必要不可欠やと言えまひょ。

その場で現金決済したかてらえるんか、

買い取り額の融通は効くんか。

大手はどだい無理なことを可能にする

中古車屋の存在がな、

自動車担保金融やらなんやら存在しようがあらへん。

やったらば、よう見かける『ローン中も可』とは

どないな意味なんか。

所有権がローン会社にあれば、

売却やらなんやらでけへんはずやけど。

この疑問についての答えは単純明快なんや。

ローン中やとわかっていながら流す、

要は裏のルートを使うて売却したらええだけのことや。

名義変更もせんまんまどなたはんかが乗るのなんや。

「今は金を持ってへんくせに新車を

フルローンで買う客が多いさかい、

このパターンは多いちゅうわけや。違法は違法なんや。」

また、違法ちゅう意味では、

ある「乗ったまんま」客の利払いが1日遅れたわけや。

その日の深夜、客の自宅を訪れ、

車庫をガラガラと開けるわけや。

預かっとった合鍵でドアを開け、

ギアをニュートラルに。

音を立てへんよう後ろから押し、

道路に出た所でエンジンをかけて走り去るちゅうわけや。

なあんも知らんと眠りの中にいた客は、

翌日、慌てて利息を持ってきたそうや。

「やっぱ、そないなトコを見せんとナメられはる。

こないなショーバイは客にナメめられはったら終わりやから

 

◆査定は気分次第。それでも利益は上がる。

 

査定慣れしとる客ちゅうのは夜に来たがるわけや。

明るい所やとキズを見つけられはるから。

でもこっちもこれで食っとるわけやから。」

ごくオーソドックスやいう彼の方法は、

大手中古車買い取り業者

一般的によくおるチェック法と大差ない。

車体の傷、ジャッキのポイント、メーター周りのネジ、

トランク部分のステア、ゴムパッキン、

ドア開閉の動作やらなんやらやらなんやら。

それらをつぶさにチェックし、

査定金額の3割から4割を限度に

貸し出し金額を決めるわけや。

「でも査定たって結局はこっちの気分次第なんや。

業者にとって大事なんは、

売却価格と貸す金の差額なんや」

わかりやすく言い換えると、こないなことや。

たとえばやなあ仮に、売却先の中古車やけど

80万円と見積もるトコを、

100万円と査定したとするちうわけや。

結果30万円を貸し出し、利息払いが止まった時点で

車を売却すると、利益は50万円

(それまでに取った利息は別)。

せやけどもし20万円の貸し出しやったら利益は60万円(同様)

要は査定を多少見誤ろうが、

貸付金を何割に設定するかが

気分次第
である以上、

当てずっぽうでもそれなりの利益は

あがることになるのや。

トコロで先ほど、実際に貸す金額は査定額の

3割から4割と記したが、厳密にはことなるちゅうわけや。

仮に300万と査定して100貸す場合も、

100万丸々渡すわけやのうて、

駐車場代(5万)とその月の金利(100万×0.8=8万)を

先に引くさかい、実際に貸すんは87万円。

悪徳業者が当然のようによくおる

「金利先払い」の悪しき慣習は、

ここでも生きとる。

 

◆やさしい言葉によって、客は車を手放す

最初は、どの客も「とりあえず利息分だけでも」と

必死でかき集めてくるもんらしおます。

せやけどその努力も、持って半年がええトコやいう。

業者側にしたら、完全に客が潰れるまでは

利息を取り続け、

ケツのケツに車を流してまうのが最もウマイやり方なんやし、

'無駄な努力'をしてくれる客ほどありがたいんや。

「ちびっと待ってくれ」といわれれば待つのが常道や。

トコロがそれにも限度があるんや。

もう絞りきれんと判断したら、

手っ取りはよながしてしもたほうがええ。

童話「太陽と北風」に習うたら、

ここは太陽になるのが得策や。

「そないに頑張らなくてええんよ。

月に10万必死になって集めるくらいやったら、

その金で娘はんに服でもこーてあげなよ、

やなんてぬかして。こら温情。」

優しい言葉一つによって、客の気持ちは揺れるちゅうわけや。

こないに苦しい思いをするくらいやったら、

車を手放しまひょ。家でもない、家族でもない、

たかが車なんやと。

ケツの砦はこうして陥落するちうわけや。

仕組みを聞かされると、

単純な疑問が沸きあがってくるちゅうわけや。

ローン中やったらまだしも、

客はなんで最初から中古車屋に売ってしまいまへんのやろうか。

幾度も利息を払い続けた上で

なおかつ車も取られてまう、

その事態を予測する冷静な思考力さえ

なくなってまうちうんか。

「そこに車金融の成り立つ理由があるんや。

やっぱりみんな、できるだけ

長くオノレの物にしておきたいんや。

車ちゅうのんは家族みたいなもんやから。

でもケツには手放してまうトコロが

オカシイんやけどや。」


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