お手柄!窃盗犯大追跡!

〜 勇気ある少年たちの素顔とは・・・? 〜


ある日、新聞にこんな記事が掲載されていた。


財布盗んだ男を高校生追跡、逮捕。
新京極通で窃盗の疑い。
五条署は五日夜、窃盗の疑いで住所不定、自称会社員大江豊容疑者(35)を現行犯逮捕した。 調べでは、大江容疑者は同日午後九時ごろ、京都市中京区新京極通蛸薬師下ルのゲームセンターで城陽氏の女子大生(20)の手提げかばんから財布(現金九千円など在中)を盗んだ疑い。容疑を否認しているという。

同署によると、ゲームセンターでの盗難多発を知人から聞いた市内の男子高校生三人が「自分たちで犯人を捕まえよう」と警戒中、財布を盗んで逃げる大江容疑者を発見。
約二百五十メートル追跡し、通行人らと協力して捕まえた、という。
――― 京都新聞掲載記事


この記事に出ているお手柄高校生とはいったいどんな連中なのか?
当時、別件の仕事で忙しかった調査員は、しばらく経ってからもこのことがどうしても忘れられず、ついに彼らの捜索を始めた。

その日、仕事を終えた調査員は帰社途中に京都新聞社の前を通りがかり、思わず中に入ってしまった。

受付を通し、この記事を担当した記者に、この三人の高校生の事について聞いてみた。
ところが案の定、警察からの話を記事にしたということで、学校名などの有力な情報は何も得られなかった。これは基本に立ち返り、自分の足で調べるしかない。
調査員はさっそく現場へと足を運んだ。


現場は修学旅行などで有名な商店街『新京極』。


写真1
▲ 新京極


季節がら、全国から集まった修学旅行生達であふれかえっていて、どれが地元高校生やら・・・。
まず周辺の店員に聞き込んでみることにした。
しかし、事件があった時刻は午後9時頃。周辺の店はその時間帯はほとんどの店が閉まっていて、付近の店員は事件を目撃していない、ということがわかった。


写真2
▲ 現場周辺


今度は高校生を中心に聞き込んでみる事にした。
学校でその事件と彼らの話題が広まっている可能性があるからだ

聞き込み開始から2時間が過ぎようという頃、いくつかの有力な情報を入手することができた。
そしてついに、三人のうちの一人と接触することが出来たのだ!

さっそくその日の事件についての話を取材させて欲しいと頼んだところ、快く引き受けてくれた。
そして、翌日に他の二人も連れての取材を約束してくれたのである。
報酬は、マクドナルドのオゴリ(笑)。自費で取材しているので、高いお金は払えないのである。
情けないことだが、彼は「マジッスか?! 全然オッケーッスよ!」と喜んでいる。よかった・・・。


翌日、待ち合わせ場所に行ってみると三人はお世辞にも真面目とは言いがたいが、最近ではどこにでもいる普通の高校生に見えた。
さっそく近くのマクドナルドへ行き、約束していた取材料のLセットをご馳走する。


写真3 ・・・って、なぜ一人増えているの(笑)?!

ま、まぁ、いいか。 一人分くらいなら・・・。
▲ 3人+1人


さっそく話を聞いてみると・・・。
三人は京都市内の高校生だが学校は別々で、いつもゲームセンター周辺(今回の事件現場)で遊んでいたという。

犯人のことは2週間ぐらい前から、プリクラを覗きこんだりするなど、ゲーセンに頻繁に出入りする挙動不審な男がいると気になっていた。
その後、三人のうちの一人がこの男の窃盗を一度目撃したが、確信が持てなかった。
事件当日、三人はいつものように現場周辺で遊んでいた。もう一度、あの男が現れるのを待ちながら。
三人は「絶対に今日もやる」と睨んでいたそうだ。

案の定現れたその男は、また挙動不審な行動を繰り返す。
それに気付づいた三人はバレないように監視し続けていると、プリクラを撮っていた女子大生の財布を奪って、何食わぬ顔で外へ歩き出した。
犯人が近くのパチンコ店に入ったところで、手分けをして裏口も押さえた。
これで犯人がどこから出てきても、必ず彼ら三人のうち誰かと鉢合わせになるという布陣だ。
犯人はそのままトイレに直行していった。
犯人がパチンコ店から出てきたのを見計らって、トイレを見に行くと現金の抜かれた空の財布を発見!

これで間違いない! ヤツは窃盗犯だ!

その時、犯人が外で待ち伏せていた一人に駆け寄ってきた。
犯人の身長は180cmをゆうに越えているが、ひるまずに足払いを一撃!
思わず逃げ出す犯人を追跡し、一人が顔見知りの通行人に応援を頼み、ついに犯人を捕らえた!


・・・と言うことらしい。

しかし、この三人は尾行とか張り込みとかよくやったな。
調査員に勧誘してみようかな(笑)・・・なんて思いながら再び聞いた。


調査員:  大体の話はわかったけど、じゃあどうして捕まえようと思ったわけ?
高校生A:  放って置くと被害者が増えるし、やっぱ俺たちしかいないかなって・・・。
高校生B:  確かに180、いや185cmのおっさんが向かってきた時は少しビビッたけど、
その時は俺がやるしかないって思ったしね
調査員:  勇気ある行動だから、お巡りさんにも褒められたんじゃない?
高校生C:  現場検証と事情聴取を3時まで付き合ったのにカツ丼食わせてくれなかった(笑)


今時の高校生にしてはめずらしく熱い正義感を持ったヤツらだなぁ、と感心した。見た目で判断してしまった自分を反省・・・。いや、むしろ、最近の若者はこうなのかもしれない。逆にマスコミに流れる高校生像を簡単に受け入れすぎていたのかもしれない。

とにかくお礼を云って、この日の取材は終了。

帰社途中、さっそく現場近くのゲーセンでプリクラを撮っている人たちを観察してみると・・・


写真4 写真5
▲ プリクラを撮る女性 ▲ その足元


なんと、無防備そのものではないか!
これじゃカバン持って行こうとするヤツが出てくるのも仕方ない。
窃盗は許される犯罪ではないが、プリクラ好きのみなさんは、もうちょっと自衛することも考えた方が
いいと思いますよ。


取材に協力してくれた高校生達、ありがとう。
彼らは最後にこう締めくくっていた。
    「京都は俺たちが守る!」 by三人組

力強いお言葉・・・。彼らのみならず、街全体で犯罪者を追い出そう!
・・・で、結局四人目は一体誰だったんだ?

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