近所の子供達の遊び場、児童公園。最近、近くのマンションに越してきた原口しのぶさん(仮名32歳)はこの日、娘の翔子ちゃん(仮名4歳)をつれ、公園に出かけた。
引っ越してきてから初めての公園デビューの日だった。
「同じ年頃のお母さんや子供がいるといいんだけど」
性格的に引っ込み思案なところがある原口さんだったが、娘のためにと勇気を出して家をでたのだった。
あいにく公園には3,4人の小学生が遊んでいるだけで、子供を連れた母親の姿はなかった。
「夕方より午前中がよかったかな」
原口さんは少し後悔したが、翔子ちゃんは無邪気に走り回っている。
「まあいいか、翔子さえ楽しければ。たとえ誰かがいたとしても、声をかける勇気がでなかったかもしれないし」
原口さんは自分にそう言い聞かせ、しばらく翔子ちゃんが一人で遊ぶ様子を眺めていた。
「ママ、お友達見つけたよ。一緒に遊んでもいい?」
翔子ちゃんが原口さんに駆け寄りこう言った。「お友達って誰?どこにもいないじゃない」
「いるよ、お友達。ほら」
翔子ちゃんが差し出したのは薄汚れた人形だった。
「翔子ちゃん、それは汚いから拾ってきちゃダメ。ポイしましょうね」
原口さんは翔子ちゃんの手から人形を取り上げた。すると翔子ちゃんはエーンとなきながら原口さんに言った。
「それはお友達のなの。あそこにいるお友達のなの」
「だからお友達ってどこにいるの?どこにもいないでしょう」
子供が相手だけに原口さんはさして気にもとめなかったが、翔子ちゃんは怒ったように人形を奪い取り、駆け出していった。
後を追った原口さんは驚いた。翔子ちゃんは奪い取った人形を誰かに渡そうとしている。しかし、原口さんの目には何も見えない。
「ごめんね、お人形さん返すね」
翔子ちゃんがそう言って、人形を前に差し出した時だ。翔子ちゃんはそれまで聞いたことも無いような大きな声で泣き出してしまったのだ。
「イヤ―――――ン!」
翔子ちゃんは確かに友達がいたという。その女の子が翔子ちゃんに人形を渡し、それを返した瞬間、その女の子が見えなくなってしまったという。翔子ちゃんが見た女の子。それが誰なのかは深い謎である。
(関西怨念地図より)

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