京都

公園で見たものは(宝ヶ池公園)

一年を通して、のどかな光景が広がる京都市街の宝ヶ池公園。 駅の周辺には桜が咲き乱れ、ボート遊びをはじめ、東の外れにある子供の楽園には珍しい屋外トランボリンやコンクリートのお山、迷路など様々な遊具施設が整っている。 こんな平和な公園で心霊騒ぎとは信じたくない話だが、本誌にはいくつかの事象が寄せられている

一つは、河本太郎(仮名、39歳)さん一家の体験である。 ある晴れた日の土曜日、河本さんは家族四人でこの公園を訪れた。 下の子がまだ2歳のため、遊べる遊具は限られていたが、長女の沙紀ちゃんは小学校二年生。 周りの子供達とすぐに仲良くなり、トランボリンや岩登りを楽しんでいた。 異変が起きたのは、昼食のお弁当を食べた後だった。

「お腹痛い」
沙紀ちゃんが急にお腹を抱え、苦しがった。
「あら、何か悪いものを食べたかしら。 困ったわね〜」
妻の千鶴(仮名、35歳)さんは沙紀ちゃんを抱きかかえ、背中をさすった。
「おトイレ行こうか、沙紀ちゃん」
そう声を掛けると、沙紀ちゃんは大きく首を横に振る。
「行かない、お友達が待ってるから」
「友達なんていいから、早くトイレに行っておいで」
河本さんも、苦しそうな沙紀ちゃんをひとまずトイレに連れて行こうとしたが、沙紀ちゃんはがんとして動かない。
「あそこのお友達呼んできて。 ご飯食べてないから、おにぎりあげて」
苦しみながらも沙紀ちゃんは、その友達という子のことを気遣っている。
「わかった、わかった、お友達呼んでくるからね、どこのいるの、そのお友達は?」
千鶴さんが沙紀ちゃんに尋ねると、沙紀ちゃんは急に立ち上がって、山の方を指差した。
「あそこ、あそこのお山の上」
しかし、先ちゃんが言う山の上にはその時間、遊んでいる子供は一人もいない。
「いないよ、お友達、もう帰ったのかも」
千鶴さんがそういっても、沙紀ちゃんは駄々をこねる。 
「あそこにいるでしょ、立ってるでしょ」
仕方なく、河本さんが小山の側まで見に行くことにした。

お山は先ほどまでの賑やかさとは打って変わり、シーンと静まり返っていた。 やはり子供の姿はない。 お腹が痛くなった沙紀ちゃんが、ちょっと混乱しているのだろうと思った河本さんだったが、次の瞬間、沙紀ちゃんの言葉を信じざるを得ない光景に出くわした。
お山の頂上に、大きな影と小さな影が二つ現れ、ス―――ッと消えていったのだ。
「なんだ、今のは」
すると、遠くから沙紀ちゃんが叫ぶ声がした。
「バイバ――イ、良かったね、おばあちゃん来たんだね、バイバ――イ」
沙紀ちゃんには何かが見えたのだ。 おばあちゃんに手を引かれ、山を降りていく子供の姿が。

もう一つの証言はまったく違うものだ。
それは吉川英司(仮名、40歳)さんが妻の恵美(仮名、37歳)と二人で、宝ヶ池公園を訪ねたときのこと。 結婚して10年になる二人は子宝に恵まれず、夫婦二人での生活が続いていた。 子供は半ば諦めていたものの、宝ヶ池公園に来ると、元気に遊ぶ子供達の姿を見ることが出来る。 もう一度、不妊治療にチャレンジをと、勇気を貰う意味でもこの日の訪問は重要だった。

池の周りを散歩していると、水上ではボートを漕ぐカップルがキャーキャーとはしゃいでいる。
「俺たちもボートに乗ろうか」
吉川さんが恵美さんの方を向くと、恵美さんはうつろな瞳で池の方を見詰めている。
「どうしたんだ、気分でも悪いのか」
心配そうに肩を抱いた吉川さんだったが、恵美さんは夫の存在にまったく無関心で、放心状態に近かった。
「あ、あ、あれは‥‥。私たちの赤ちゃん‥‥」
恵美さんが口を開いた。
「赤ちゃんって何の事? 何かいるのかい?」
「赤ちゃん、私たちの‥‥」
恵美さんは同じ言葉を繰り返すばかり。 困った吉川さんが、恵美さんを抱きかかえようとすると‥‥‥。
「キャ――、やめて――、来ないで――、来ないで――」
恵美さんが突然、叫び声を上げ、吉川さんの手を振りほどいた。
「池の上で赤ちゃんが溺れている、あ――、水の中に吸い込まれて行く、行かなくちゃ、助けに行かなくちゃ」
恵美さんはそのまま気を失ってしまった。

子供欲しさのあまり、幻想を見たのだと吉川さんは思っている。 しかし、翌日、平常心を取り戻した恵美さんに尋ねると、「幻想じゃない、あれは水子の霊だと思う」
といって聞かない。

後で知った話だが、その昔、宝ヶ池に幼子(おさなご)を連れ、入試自殺を図った母親がいたというが、それとの因果関係は明らかではない。 のどかと思える公園でも霊の存在は無視できないようだ。

 

(関西怨念地図より)


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