戦後日本経済最大のミステリー「M資金」とは?
(7/7)

日本の歴史の中で、これほど長い時を経て詐欺のネタとして利用されたものはない、「M資金」。

この戦後の混乱の時代に生まれたとされる巨額の秘密資金を低金利で融資することをネタにした詐欺事件は、昭和から平成の世となった現代でも、日本の社会に脈々と根付くかのように発生し続けている。

それらは一介の詐欺事件という内容にとどまらない。戦後、日本の歴史を揺るがせた事件や、社会に衝撃を与えた数々の事件の裏側にも、「M資金」の陰が見え隠れする。例えば時の首相、田中角栄が逮捕されるという衝撃が日本列島を襲った「ロッキード事件」の裏にも、「M資金」を巡る闘争があったといわれている。

また、渋い二枚目俳優として人気を博していた男優の自殺事件も、「M資金」絡みのものでなかったかという噂は今も絶えることはない。

 

●「M資金」絡みの詐欺の3つ特徴

 

第1は、寿命も長いが仕掛けのスケールも大きいということだ。騙し取ろうと言う額の中には、1の数字の下に0が8つや9つは並ぶ額もあり、ケチな詐欺事件は及びもつかない空前絶後の大仕掛けが用意されている。

資金の出所に詐欺師がネタにするのは「GHQ」だとか、「アラブのオイルマネー」、「皇室の隠し資金」、「ロスチャイルド家の財産」などというから、資金の出所も世界を股にかけたスケールの大きさだ。

第2は、騙される側の人物たち、つまり儲け話に引っかかる人物が、日本を代表する一流企業の経営者や団体の理事、各界の著名人が多いということだ。ターゲットにされた企業は、一部上場の早々たる顔ぶれがズラリ。普段、無人キャッシングの機械にさえ融資を拒絶されている貧乏&ミジメな庶民からみても、「アホじゃないの?」と嘆いたり呆れたりするほど、コロリと騙されている。

第3のは、これまで「M資金」絡みの事件を「詐欺事件」とか「騙された」という表現を使ってきたが、実際に「M資金」という名の巨額マネーが、実在してはいないと断言できないことだ。なかには、ある企業は「M資金」を基にする巨額の融資を実際に手にしたという話も、まことしやかに流布されている。

何しろ騙された会社は超一流企業であるがゆえに「自分たちはオイシイ話をエサに騙された阿呆者です」といさぎよく手を上げるわけにはいかないようだ。

 


●亡霊「M資金」の悲劇

 

時には会社の誰かを犠牲に、時には事件そのものがなかったかのように事実を隠匿し、闇に葬ってきた。その結果、死者が出たばかりでなく、噂は噂を呼んで伝説へと昇華し、新たな詐欺話が創作されることになっていった。本当に「M資金」なる性格の巨額な資金が存在するか否かという事実は、次々と仕掛けられるおいしい話のバトルロイヤル状態にかすんでしまっている。

こうした状況の中、「M資金」はその実態を世間に知れせることなく、戦後の日本の経済社会の裏街道を一人歩きしてきた。その実態を追うことは、ビッグな詐欺事件のカラクリを知ることにとどまらない。陰の日本経済史を学ぶことであり、なかなか姿を見せない妖怪マネーに踊り狂った、有象無象の愚かで哀しいヒューマン・ストーリーや企業小説を読むような趣にもあふれている。

つづく

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