金融今昔物語5 

自称「経団連秘書」オバサン150億円集めて自己破産(6/21)


物事あんじょういっておるときはええが、

窮地に立つと・・・このオバサンが選んやんは詐欺やった。

●ハデハデ「オバチャマ」、
月2%の利子を配当

関西には時々とんでもない大物女が現れるようや。

4000億円の自己破産をした料亭女将、

尾上縫が最近のよい例やけど、

平成4年、女将でもなんでもあらへん単なるお婆はんが、

ひたすら口八丁で150億円もかき集めた

事件があったちゅうわけや。

詐欺で逮捕された女は、京都に現れたS江(64歳)。

昭和30年代、保険の外交員の仕事をしてるうちに

株を覚えはじめ、儲かるようになったため、

知人の金を預かって運用するようになりよった。

「出資者」は順調に増え続け、

S江は預かり金の2%を毎月配当しとった。

年に24%の高利!確かにオイシイ話や。

S江は黒地にラメ入りのド派手な服を着て

光りモノでギンギンに飾り、

ねきでは「美川健一みたい」とか、

「小森のオバチャマみたい」やなんて言われとった。

携帯電話片手に証券会社に売り買いの指示をする声は

近所中に響き渡っとった。

実際に、2%の利息はきちんと支払われとったし、

この高配当で億単位の利益あげた「顧客」もいて、

「事業」は順調に推移するかに見えたちゅわけや。

そやからこそ20年にもわたって続けてこられたのや。

が、バブルが崩壊。株価暴落とともに、

S江の運は尽きたわけや。

利息の支払いができなくなり、預かった元本に手をつけ、

株を担保に入れての自転車操業。

その頃からS江は、こないなことをぬかすようになりよった。

「ウチ、経団連の秘書しとるんや。

"法人為替"いうごっつい取引があって、

ウチも一枠もろうとるんよ」

「秒単位で世界中の情報が手に入るわけや。

ぜったいに損はさせへんで」

自信たっぷりに言い切るS江のデマカセは、

資金繰りの悪化と共に、

次第に大袈裟になっていった。

経団連の秘書になりよったんは、

ある仏像彫刻の師匠に弟子入りしたんが縁だそうな。

そこは政財界の大物のサロンといった趣で、

「瀬戸内寂聴はん」や

「松下幸之助はん」も通っとったんやとか。

「次はN製菓とK社がきよるで!

見てなはれ」いう「予言」をしたこともあった。

もっとも、この時はホンマにストップ高になってしもて、

一儲けしたらしいが。

 

●長屋暮らしの「経団連秘書」?

これまでの実績のうえに大ボラを重ねた口車に

まんまと乗せられよった被害者は100人以上

被害総額は150億円にのぼるわけや。

中には4億5000万円もつぎ込んだヤツもおるんやけど、

S江の債務は膨らむ一方やった。

行き詰ったS江は、ついに自己破産を申請

債務総額は30億円。

同じ日に、26人から詐欺罪と出資法違反で

告訴
されたんや。

退職金や貯金をぜぇんぶつぎ込んだ人、

家を担保に入れて出資した人、

サラ金にまで手を出した人・・・

家族に内緒で出資しとる人も多く、

被害が大きすぎてて表ざたにでけへんケースも多いゆう。

150億円も集めたはずのS江やけど、

実は借家暮らし。古くさい長屋に親と同居しとった。

不動産業を営む夫がいたが、

S江は株に忙しいんか家事はせへんし、

食事は仕出しか、近くの老夫婦に作って貰っとった。

この人のええ老夫婦も老後の蓄え

4千数百万円をS江に預けとったちゅから罪は重いわけや。

ところで、破産時点でのS江の資産は

8000万円足らずやった。

なんぼ配当の支払いが嵩んどったとはいえ、

数十億は残ったはずの預かり金はいったいどこに消えたんや!?


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